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□2013/バレンタイン☆
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不定期連載

□St. Valentine's day 第一話



「もうすぐバレンタイン、か…」

不意にぽつりと隣から声が届く。
その横顔から察するに、意識せず口に出ていた様子。

店先に並べられた色とりどりのラッピングされた箱。
その上に書かれた派手なPOPをつい読み上げてしまっただけなのだろう。

菓子屋の策略。
むしろ陰謀と言ってもいい。

その日は意中の人物に告白するべし、というような到底チョコと結びつくハズのない煽り文句。
見事に踊らされてしまっているのはどうなんだと思わなくもないのだが。

結果、それで告白されるのであれば文句は無い。

――その相手が、オレであれば。

「くれるんだろ?ルーシィ」
「…へ?何の事?」
「だから。アレ」

あからさまにソレと分かる商品の山を指差し、次に手を広げてルーシィへと差し出す。

先手必勝。
誰かに先を越されるぐらいならと、自ら名乗りを上げる。

情けないと言うなかれ。
鈍感なルーシィにはこれぐらいしておかないと、気付かれない可能性があるのだ。
いつもは無駄に鋭いくせに、こういう事に関しては妙に鈍い。

本で仕入れた知識だけは豊富にあるのだろうけれど。
実体験が伴ってないせいか、イマイチ分かってない。―…と思う。

「あぁ、あんたにもちゃんとあげるわよ。心配しなくても」
「あんたに“も”?」
「数に入れてあるから、安心しなさい」

十派一絡げ。

あっさり言い放たれた言葉に、そんな文字が脳裏に浮かぶ。

いやいやいや。
オレが言いたいのはそういう意味じゃなくて。

「特別なチョコとかねぇのかよ」
「特別?」
「手作りとか」
「あー、うん。あるかなぁ」
「んだよ。そのあやふや」
「いいの!まだ分からないから」

少しだけ困ったように視線をさ迷わせ、くすりと笑ったルーシィ。

それだけで、オレは気付いてしまった。
きっとバレンタイン前に告白してOKの返事が貰えたら用意する気に違いない。
だから、まだ用意するか迷っているのだ。

慎重派なルーシィの事。
受け取ってもらえないチョコが出来るのは嫌なんだろう。

――迷う必要なんかねぇのに。

(オレはいつでも準備万端だ)

「ま、頑張れよ」
「うん!」

あぁ、向けられる笑顔が眩しい。

思わずくらりと揺れた頭を何とか踏ん張り、支える。
本番まで残された日付はあと半月。
今まで待っていた時間に比べれば、ほんの僅か。

もう少しだけ、頑張れ。オレ。

==========
2013.01.29

拍手お礼何もないのに、いつも押して下さってありがとうございます!

お礼にこっそり拍手で不定期連載してみます。
バレンタイン当日までに全員(ナツ・グレイ・ロキ・+α)をクリアするのが目標。
間に合わなかったらごめんなさい。(泣)
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