限定Free<book>

□2012/バレンタイン☆
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Happy バレンタイン。<ナツルーVer.>




「んだ?これ」



受け取った包みを珍しそうに眺め、思わず眉を寄せるナツ。

それはまるで禍々しいものでも見るかのような目つき。

何て失礼な奴、と思わなくもないのだが、ルーシィには反撃できるような余裕はない。



決して「綺麗」だとは言えないラッピング。

中身も、お世辞にも上手に出来たとは言えないだろう。



でも、一応全て手作りで頑張ったのだ。

それもこの「バレンタイン」という日の為に。



こういう事には疎いナツのこと。

渡したところで気付いてくれるだなんて、期待はしてなかったけど。



――そんな風に、指先で摘まんでぶらぶらさせる必要はないんじゃない!?



「もう、いい!返して!!」



ナツの手から包みを引っ手繰り、背中を向けてダッシュで駆け出す。

じわりと目元に浮かぶ涙も拭かないまま走り続けて。

ふと街角で見つけたゴミ箱目掛けて、思い切り腕を振り上げた。



その時、突然がっしりとその手首を掴んだのは、覚えのある温もり。



「離してよっ、捨てるんだから!」

「なんで捨てんだよ。オレにくれたんだろ?」

「要らないなら捨てようが何しようが自由でしょ!?」

「誰が要らないっつったよ。早とちりすんなって」



今にも投げ捨てられそうになっていた包みを奪い、不満そうに頬を膨らませる。

文句を言いたいのは、こちらの方だと言うのに。



「悪かったよっ。気付かなくて」

「何がよっ」

「今日がバレンタインだって事を、だよっ」

「…へ?」

「ギルドの皆から怒られて、初めて気付いたんだ。だから…っ」



あぁぁぁぁ、と唸り声を上げながらがしがしと髪を掻きあげて。

落ち着きなく顔を左右へと動かし。

やがて、覚悟を決めたようにぴたりと顔をルーシィの正面で止めた。



「オレにくれよ。ソレ。オレの、なんだろ?」

「そう、だけど…」

「ちゃんと、大事に食べる。だから、」



ん、と突き出された手にルーシィは思わず苦笑を浮かべる。

目元にはまだ乾燥しきっていない、涙の雫。

泣き笑い、とでも表現すれば良いのだろうか。

笑っているハズなのに、涙が止まらない。



「仕方がないから、あげるわよ…っ」



ぽすんと、差し出された手のひらにくしゃりと歪んでしまった包みをそっと置く。

受け取ったナツはにかっと嬉しそうに笑って。

その笑顔に、胸につかえていたものがほわりと融けていくのを、感じた。



「後で感想、聞かせてよね…っ」



精一杯の意地を張って、ナツへと背を向ける。

“おぅ!”と聞こえた返事に、ルーシィはこっそり目元を拭いた。

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2012.02.14
 
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