限定Free<book>
□2012.年末年始
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New Year's Eve。
「今年も、とうとうあと少しねぇ」
規則的なリズムで時を刻む針を見上げ、ぽつりとこぼしたのはフェアリーテイルの看板娘。
所狭しと広げられた食事も、粗方がメンバーのお腹の中。
ひとつ、ふたつと僅かに残っているのも誰かが気付いた瞬間あっという間に消え失せるのだろう。
腕によりをかけて作った甲斐があったというもの。
「ミラさん、これ、どこへ片付けたらいいですかー?」
「あら。置いたままでいいのよ?ルーシィ」
「いえ、そんな訳には」
空いた皿を手に姿を現したルーシィの、もう片方の手にはカクテルの入ったグラス。
年末年始ぐらいは羽目を外せと半ば無理矢理飲まされていたような気がしたが――。
「あぁっ。ここにも空いたお皿がっ。何だかいいですよね、お皿って感じがして!」
―…やっぱり、散々飲まされたらしい。
「ちょっとルーシィ。大丈夫?」
「ダイジョウブですっ!」
「何言ってるのか、分かってなさそうねぇ…」
よろりとよろけた体がガンッ、とテーブルにぶつかってもルーシィは笑顔のままで。
普段はしっかり者なのに、といつもの姿とのギャップに少しだけ驚く。
でも、やはり年末だから仕方ないのかしらね、とミラはくすくすと小さく声を立て笑った。
「どうしたんですかー?」
「ううん、何でもないわ」
「そうですかぁ?」
カラカラと楽しそうに声を上げるルーシィの姿に、やっぱりいくら何でも酔い過ぎだろうとグラスを取り上げる。
一瞬、手持無沙汰な様子でうろっと彷徨ったルーシィの手に、ミラは即座に水入りのグラスを押し付けて。
これ以上はダメだと暗に示せば、意外にも“はぁい”と素直な言葉を返してきたルーシィ。
「気を付けてね、ルーシィ」
「大丈夫ですってー…」
水入りのグラスを手に皆の元へと戻っていくルーシィの足取りは、やはりふらふらと頼りなく。
酔っ払ってどんちゃん騒ぎしている他のメンバーとぶつかったりしないかとハラハラしながら見守り続ければ。
―…やっぱりというか、案の定というか。
「ルー…っ!」
どん!と横から突っ込んできた体に酔っ払いのルーシィが対応できるはずもなく。
ぐらりと小柄なその体が傾き、床に倒れ込んで手にした水を被って大惨事――、と思ったら。
いつの間にか現れた『彼』がルーシィの体を支え、転倒を未然に防げた事にほっとしたような表情を浮かべている。
あぁ、そうだったわね。
私が心配なんかしなくても、彼がいるんだったわ――。
「ルーシィの事、ちゃんと守ってあげてね」
何やら話している2人を見つめ、ふわりと一度笑みを浮かべてから片付けに戻るミラジェーン。
時計の針が、カチリとまたひとつ頂点へ近付いて行った。
さて。
ルーシィを支えた『彼』は一体誰?
1.「ったく、飲み過ぎだろ?お前」
2.「おい。大丈夫か?」
3.「今日は休んだ方が良さそうだね。部屋まで送るよ」
4.「こら、起きなさいよ」
※こっそり4も公開に切り替え。