限定Free<book>

□ハロウィンの逆襲
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「…なんであんたまで来るのよ、グレイ…」

「あぁ?んなの、ハロウィンだからに決まってるだろ?」

「訳分かんないんですけどっ!?」



よぉ、と軽く手を挙げたグレイに、ルーシィは今度こそ全身の力が抜け、ぺたりと床へ座り込む。

そんなルーシィとは対称的に、はち合わせたナツとグレイは“何でテメェがいるんだよ”“お前もだろ”…なんて。

いつも通りと何ら変わらない睨み合いを始めている。



「あーもー…、何なのよ。ホント…」



ハロウィンというイベントは、決して嫌いなものではない。

仮装したりお菓子を配ったり、お祭りともいえるとても楽しい行事のハズだ。

だが今は、その楽しかった記憶さえ恨んでしまいたくなる程。



一触即発の殺気を滲ませている2人は、ハロウィンの陽気とはほど遠く。

それを面白そうにただ傍観しているロキの姿も、また同じ。



本当は、ハロウィンに手の込んだお菓子を用意しようと色々考えていたのだ。



ジャックオーランタンを作って、くり抜いたカボチャの身で何が作れるだろうかとレシピを調べた。

クッキーだけじゃ面白くないから、プリンとかケーキとか、それこそ本当に色々と作ろうと気合いを入れていたのに。

それを、この男たちは。



――もう絶対に許さない…!!



「どうしたの?ルーシィ」

「あ?何だか顔が怖くなってねぇか?」

「お前等が邪魔だってよ。だから帰れ」

「何言ってんだ。お前が帰れよ」

「ちょっと、2人共少しだけ黙った方が―…」

「ロキは黙ってろっ!」

「えー?」



「あんたも黙りなさい、ナツ…」



唸るように重く静かに落とされた言葉に、いがみ合っていた3人の顔がひくりと引きつる。

さすがにこれ以上はキケンだと本能が告げたのだろう。

だが、…もうすでに手遅れなのだが。



「おい、ルーシィ怒ってるぞ…?」

「それはお前のせいだろ」

「何でだよっ。お前が来たせいだろ!」

「でも、一番最初に来たのはナツなんだよねぇ?」

「それはそうだけどっ」



「…ちょっといいかしら?あんたたち……」



びくぅっ、と大きな痙攣ひとつ。

同時に身体を震わせた3人が、ルーシィへ同意を示してこくりと頷く。

それが見えたのかどうかは分からないが、首をかくりと倒したままルーシィがゆっくりと口を開いた。



「…イタズラするつもりだったのよね…?私に一体何をするつもりだったのか聞いてもいいかしら……」

「なに、って…」



「全身くすぐりの刑?」

両手をわきわきと動かすナツと。



「ゴスロリメイドコスプレ」

ばさりとフリル付きの衣装を取り出したロキと。



「まだ何からやるか決めてねぇな」

にやりとあやしげな笑顔を浮かべるグレイ。



「へー…、…そうなの……」



ゆらり、とルーシィの身体が揺れて見えるのは、その身に纏った気配のせいか。

いち早くその様子に気付いたグレイが、ひくりと頬を引きつらせて。



「じゃっ、もう夜中だしオレは帰ろうかなぁー」



くるりと180度回転。

ルーシィに背中を向け、ドアノブを掴もうと伸ばした腕の先に。



――どかっ!!



「そんな、遠慮しなくてもいいのよ?グレイ…」

「い、いやっ、ほら、もう寝る時間だろ?」

「そうだったかしら…?」



ドアに勢い良くぶつかった物体に、びくっと腕を引き寄せ必死に笑顔を浮かべるグレイ。

つぅ、と首筋を汗が伝い落ちるのは残る2人も同じ。



「せっかくだから、おもてなしをしないと、…ね?」

「い、いやっ。今日は遠慮しておくよ」

「そっ、そうだぞ。気にする事はねぇからっ」

「ルーシィ、早く寝ないとお肌に悪いから…っ」



「何を今更…?」



くすくすと楽しそうに声を出して笑うルーシィ。

そんな彼女の背後に、彼らは一体何を見たのか。



「ねぇ、ルーシィ。おち、落ち着いてっ」

「うるさい。まずあんたは邪魔だから強制閉門」

「ロキだけズル…っ」

「続いて開け処女宮の扉、バルゴ」

「――お呼びでしょうか、姫様」



深々と頭を下げたメイド姿の星霊。

その彼女へ、ルーシィはにっこりとそれこそ見事な笑顔を浮かべて。



「ナツとグレイに、おもてなしをしてあげて?」

「分かりました。どのような事を致しましょうか」

「そうねぇ、とりあえずロキが提案してくれたゴスロリメイド姿にしてあげるっていうのはどうかしら」

「了解しました」



改めて深く一礼をし、顔を上げるバルゴ。

その視線の先には、もちろんターゲットとなった2人の姿。



「や、やめっ」

「えええ遠慮しておく…っ」

「それは了承致しかねます」

「ル、ルーシィ…!」



「――存分に楽しんでいってね?」



ふわりと微笑むルーシィと、主人に忠実で実力者のメイド。

この強力タッグに睨まれてしまったら。――もう、ただ薄ら笑いを浮かべる事ぐらいしか出来ない。



「いやだいやだいやだ!」

「そんな事しても誰も喜ばねぇって!」

「あぁ、ひとつお知らせしておきますが、この衣装は着せたものしか脱がせられない仕様となっておりますので」

「は!?」

「レオ様のご趣味です。姫様を逆恨みする事の無きよう」

「何だよソレ、本気で勘弁…っ!」

「やっ、やめてくれぇぇぇー…」



断末魔の叫び声を背に極上の笑みを浮かべるルーシィ。

その姿は正しくハロウィンに出てくる“魔女”のようだと、ナツとグレイが思ったとか、思わなかったとか。







「あ、そうだバルゴ」

「はい。姫様」

「星霊界にいるあいつもよろしくね」

「承知しております」



「…目の前で見れないのが残念ね」





Happy ハロウィン☆

==========

2011年ハロウィンSS。

何だかな…うーん、無駄に長くなってしまった…。(汗)

書き直ししたんですけどね。しっくりこない。

うぅぅ、悪戯のレパートリーが欲しい!←そこなの。


ハロウィン当日のみダウンロードフリーとなります。

理由は…当日までに中身が変化する恐れがあるので。(汗)

お気に召しましたら、当日、是非。報告不要です。

※DLF期間終了しました。
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