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□A happy bride?
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フェアリーテイルの看板娘が掲示板に貼り付けた紙を確認し、思わず左右の顔ぶれへと視線を向ける。
じっと食い入るように見つめているところを見ると、どうやら考えている事は皆同じのようで。
「おい、もしかしてあれ」
「…あぁ、多分」
考えが一致した瞬間、思わずイスを蹴飛ばし走り出す。
誰もが我先にと猛ダッシュで目指すは、もちろん結果が書かれているであろうあの張り紙。
「おい、邪魔するなよ!」
「お前こそ!」
隣を走るグレイを腕で妨害しながら走るナツと、その腕を弾き飛ばすグレイ。
いつもならば取っ組み合いの喧嘩にでも発展しそうなものだが、今はそれどころではない。
先日、本人に直接訊ねたものの見事なまでの一撃で撃退され、結局今日まで、教えてもらえないままだったルーシィの理想とする結婚相手。
ナツもグレイも、共に絶対に隣の奴だけは絶対に無い!と信じているのだが。
「っ!と、ルーシィ、ルーシィは」
「どこだよ、ルーシィ…、あった!……あ?」
「これ、オレの見間違いか…?」
「…いや、オレも多分、同じものが見えている、と思う」
ルーシィが選んだ、理想の相手。
後から来た奴とはいえ、確かにギルドのメンバーだし選ばれても何ら不思議はないけれど。
ルーシィがあえて奴を選んだという理由が、さっぱり分からず頭には疑問符が浮かぶばかりで。
「ミラ!」
「なぁに?そんなに血相変えて」
「これ、間違いじゃねぇのかよ」
「あら。それは間違いなくルーシィが選んだ相手よ?」
にっこりと見事な笑顔と共に出されたダメ押しの一撃に、ナツもグレイもその場へと力なく沈み込む。
まさか、まさか奴だけは選ばれる事はないと信じていた、のに。
「テメェ、この野郎!」
「ルーシィに一体何を吹き込みやがった!」
「―…あぁ?んだお前ら。何もしてねぇよ」
「嘘言え!何かしなきゃ、ルーシィが選ぶ訳ねぇだろ!」
「うるせぇ。そもそも、んなくだらねぇ事にいちいち振り回されてんじゃねーよ」
「んだと、この野郎…!」
「あぁ?やるか?ちょうど暇でストレス溜まっててよ。…面白ぇ。相手してやる」
まったくもって見事なとばっちりで喧嘩を吹っかけられたルーシィの理想の相手は、かじっていた鉄パイプをぽいと放り出し。
怒りを露にした2人と対峙し、余裕の笑みを浮かべながらだらりと構える。
その姿はより一層ナツとグレイの怒りに油を注ぎ。
「やってやろうじゃねぇか!」
「覚悟しろよ、ガジル!」
「さぁ、それはどっちだろうな」
「ム、カツク…っ!!」
「あらあら。皆、元気ねぇ」
「ミラさん、そんな他人事みたいに」
「でも選んだのはルーシィでしょ?」
「そ、それはそうなんですけど…」
そもそも、こんな事がなければ騒動も起こらなかったんじゃないかと浮かんだ言葉は喉の奥へと押し込んで。
天使の微笑を浮かべるミラジェーンの隣でこっそり天上を見上げる。
一体いつまでこの騒ぎが続くのかと思うと、正直うんざりという気がしなくもないのだけれど。
「楽しそうねぇ」
「そっ、そうですねっ」
「ルーシィも参加してきたら?」
「いえいえいえ。それは遠慮しておきます…っ」
「そう?楽しそうだけど」
そんな言葉が出てくるのは魔人だから、と思わず突っ込みそうになるのをぐっと堪えてカラ笑い。
目の前で繰り広げられている乱闘シーンに肩を落として。
「元気ですよね」
「そうねぇ」
選ぶ相手を間違えたのかもしれないとひとり溜め息をついたルーシィだった。
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