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□Be HAPPY!
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「花火大会?」

「そう!今日の夜、あるんだって!」

「へぇ…」



興味ない、と言わんばかりに淡々と返事を返すナツに、ルーシィはあからさまにむっとした表情を浮かべ、じろりと睨み付ける。

そんな視線を浴びながらも、やはりぼんやりとしたナツの態度には変化がなく。



「…っ、いいわよっ!あんたは誘わないっ」

「あ?…って、ちょっと待てよ」

「もういいったら!」



捨て台詞と共に離れていくルーシィの後ろ姿。

ナツはどう呼び止めたものかと迷いながらも、手を伸ばしかけて。



「グレイ!ロキ!あんた達は行くでしょ?」

「あ?何に」

「花火大会だよね?もちろん、ルーシィとなら」

「それか。あぁ、いいぞ」



すんなりと許諾した2人に、“そうこなくっちゃ”と満面の笑顔を浮かべたルーシィに。

ナツは出遅れた自分に、がしがしと頭を掻きながらイスを蹴り飛ばした。






□Be HAPPY!






「…何であんたまで来るのよ」

「いいだろ、別に。オレ1人増えたって」

「興味ないなら来なくてもいいのよー?」




ぷい、と顔を背けたルーシィに、そうじゃねぇと反論しかけて。

ルーシィのすぐ横にいる2人組に思わず言葉が喉で詰まる。



「ナツは断ったんじゃねーのかよ」

「うっせぇよ。氷野郎」

「なっ!…やる気かよ、このクソ炎」

「やってやろうじゃねーか!」



ぎり、と顔をつき合わせて睨み合う2人を、はーっと深いため息を落としながら見守るルーシィとロキ。

この2人が揃うと、どうしてこうも喧嘩ばかりしたがるのか。

炎と氷だから相性が悪い、と言ってしまえばそれで終わりなのかもしれないが。



「ちょっと、早く行かないと始まっちゃうって!」



花火の会場は、まだ少し先。

歩いていく時間を逆算したら、そろそろ出発しないと間に合わなくなってしまうだろう。

こんなところで足を止めている場合ではないのだ。



「まぁ、ルーシィ。喧嘩したい2人は放っておいて僕達だけでも行こうか」



さりげなくルーシィの腰へ腕を回し、先へと促すロキ。

そんな手慣れた仕草に一瞬だけルーシィの眉が寄るも、ここはロキの言い分に従った方が良さそうだと足を向る。

足を進めればカラカラ鳴る、履いた下駄の音が心地よい。



「今日もとっても可愛いね、ルーシィ」

「ホント!?ありがとっ」



花火大会といえば浴衣でしょ、と一応それなりに気合いを入れて着込んできたのだ。

誉められれば、その相手がロキだとしてもやはり嬉しい気持ちになるのに違いはなく。

えへへ、と普段あまり素直に出てこないルーシィの心からの笑顔に、ロキは一瞬だけ戸惑い、すぐにぽんぽんと頭を撫でた。



「…いつもそんな風にしてくれればいいのに」

「ん?何か言った?」

「いや、何も」



お返し、とばかりに浮かべられたロキの笑顔に、今度は逆にルーシィが表情を変える。

普段はあまり気にしていないが、ロキは紛れもなく人気投票上位ランカーなのだ。

その笑顔に着流しの浴衣姿、ときたら見慣れた者であってもその破壊力は影響する。



「ロ、ロキも似合ってるんじゃない…っ?」

「そう?ありがとう。嬉しいな」



再びにっこりと笑ったロキに、ルーシィはぐっ、と息を飲みロキから勢い良く視線を外し。

ついでに腰に回されていた腕から逃れるように、早足に歩き出す。

そんなルーシィをふわりと笑いながら見守り、その背中を追いかけ始めるロキ。



だが、そんなルーシィを見ていたのはロキだけではなかった。



「むかつく…」

「だな」



今までの勢いはどこへやら。

瞬時にタッグ組んだ2人は、互いの視線の先を確認してこくりと頷いた。



こいつと組むのは納得がいかないが。

それよりも、今は優先させるべき事がある。



「ルーシィ!」「ルーシィ!」

「え、きゃ、ちょっと、何よあんた達…っ」

「早く行こうぜ」

「急がないと始まっちまうぞ」



右手と左手。

それぞれに暗黙の了解でルーシィの手を取り、走り出すナツとグレイ。

ルーシィはとっさの事に対応できず、ただ2人につられるように走り出す。



「え、ちょっとルーシィ!?」



対応の遅れたロキを置き去りにして、どんどん小さくなっていくルーシィの背中。

“2人に先を越された”と気付いた瞬間、地面を蹴り上げ全力で走り出した。



「ナツ!グレイ!」

「あぁ、お前はもっとゆっくり来いよ」

「先に行ってるから、後から1人でな!」



振り向き様、あっかんべーのおまけ付き。

そこまでやられちゃ、―…大人しく引く訳にはいかない。

ルーシィは僕の、大切な。



「待てって!」



制止するロキの言葉など聞こえないとばかりに走り続ける2人+引きずられるルーシィ。

どうやら2人は本気で引き離そうとしているらしい。

―…そんな事は絶対に許さない。



もういっそのこと魔法を発動させてやろうと、キン、と手にした指輪に力を込める。

真ん中にいるルーシィが巻き添えにならないようにと慎重に目標を定めて。

あと少し進んだら吹っ飛ばしてやる。

そう固く心に決めて構えていれば。



「いい加減にしなさい!あんた達!!」

「おわっ!」

「ぐえっ」



「…あ、あれ?」



見事に左右へと吹っ飛ばされた2人と、それを見下ろすルーシィ。

その表情は――…。



「ひっ」



第二のエルザ光臨に、思わず起きあがるのも忘れて硬直する2人組。

魔法発動が空振りに終わったロキは、やはりこちらも硬直して。

ぽかん、とその成り行きを見つめるばかり。



「せっかく皆で出掛けるんだから、仲良くしなさい!」

「えー…、だってよ」

「…何よ文句があるなら聞きましょうか…?」

「い、いえ。ありません」



再びピシリと固まった2人を見下ろし、はぁ、と深いため息を落としてから。

ルーシィはくるりと振り返り、後ろで呆然としていたロキへと手を伸ばす。



「さ、早く行きましょ!」

「あ、あぁ。…そうだね」



日に日にエルザに似てきていると感じるのは、気のせいか。

いや、気のせいだと思いたい。



そんな願いを込めた3人の視線を我関せずと受け止め、ルーシィはくすくすと楽しそうに。



「ほら、あんた達も早く起きて!」

「わーったよ」

「仕方ねぇな」

「…懲りないみたいね?」

「そ、そんな事はないぞっ。なぁ」

「おっ、おう」



こっそり陰で互いを牽制しあいつつ、ルーシィを囲んで歩き出す。

明らかに浮かれているルーシィに、本当はちょっとだけまだ不安やもやもやが残っているのだけれど。



「はーやーくっ」

「ルーシィ!?」

「私1人で行っちゃうからねー」



足取り軽く駆け出すルーシィを追いかけるのは、今度は1人ではなく3人。



「置いてくなって!」

「おい、早ぇよ!」



夕闇が包んだ世界の中。

ひらひらと飛び跳ねる金色の蝶を、見失わないようにと。



「待ってよ、ルーシィ!」



必死に追いかけながら、それでも何故だか笑顔が浮かんだ。


********************

2011.08

季節ネタでごめんなさい的な。(汗)

一応、月毎には出そうと考えているので、まぁいいかなー、と。

え、ダメですか…?うぬ。

本当は花火大会のシーンを書きたかったのに、前振りだけで終わっちゃったというね。

いかに文をまとめるのが苦手だというのが分かります。(笑)



拍手ぽちぽち、ありがとうございました!

次はちょっとしたおまけ。(短いです)
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