学園パロ<book>
□キラキラ光った夢をあげるよ
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「あ〜、怖かった…っ」
隣で息を切らしているレビィに話しかけながら、同じく荒くなった呼吸を必死に整える。
プールサイドから一目散に逃げ出して。
その建物が完全に見えなくなって、ようやく足を止めた2人。
「ホントにねぇ〜」
くすりと笑顔を浮かべ、レビィが答える。
そんなレビィに同じく笑顔を向けながら、“アレは一体何なの?”と見えなくなった建物を指さし問う。
すると、レビィは“すっかり忘れてた〜”とカラカラ声を上げて笑った。
「ごめんね。悪い子じゃないと思うんだけど」
「いきなり怒り出すとは…」
「だよねぇ。ルーシィ、何も悪い事してないのに」
“アラ嫌だわ、奥様”…と言わんばかりの仕草でパタパタと手を振るレビィ。
「分かったと思うんだけど…彼女。グレイ先輩がすっごーく好きなの」
「…そう、みたいね」
「だからね、誰かれ構わず喧嘩売っちゃうんだ」
“だから何もルーシィだから喧嘩売ったわけじゃないから。安心して”と言われ、ルーシィは“了解”と両手を上げる。
でも、しかしグレイ先輩と言えば――…。
「世の中、色んな好みの人がいるものね」
見た目は確かに悪くないとは思うのだが。
―…どこかれ構わず服を脱ぐ“癖”ってどうなのよ?
視線だけで疑問を伝えたルーシィに。
“でも、悪い人じゃないから”とレビィが笑った。
「そのうち、ルーシィにも分かるわよ」
「えー?何が」
「グレイ先輩の、良さ!」
「別に…分からなくてもいいような…」
「でも、本、好きなんでしょ?なら仲良くして損はないわよ!」
くったくのない笑顔を向けられ、少しだけ“グレイ先輩”を思い出す。
初めて会った時にその身に纏っていた“本の香り”。
確かにあれは、余程常に本の近くにいる証だろうが――…。
「やっぱり、仲良くなるのはちょっと考えたいなぁ」
ぽん、と脳裏に浮かんだグレイ先輩の“癖”に、はぁ、とため息をこぼすルーシィ。
そんな彼女を、レビィはただくすくすと笑って見つめた。
(でもね、ルーシィ。きっと貴女はグレイ先輩の事を気に入るわ)
確証など何もないけれど。
あえて言うならば、―…女の勘、とでも言うべきか。
何となく、だけれど。
初めて会った時、2人がどこか近いような感じがしたのだ。
雰囲気というか気配というか、言葉にするのは難しいのだけれど。
“いつか、とても仲良くなる”…そう、レビィは直感していた。
浮ついた噂のないグレイ先輩。
彼女を作らないのかと聞いた事があったが、…“オレに近寄る奴はお前ぐらいしかいねぇよ”と笑っていた。
(そんな事ないのになぁ)
どこか自分に鈍感で、見た目に反して控えめで。
ジュビアという周知の事実の“ストーカー”がいるにも関わらず。
やっぱり、どこか他人事のようにしか思えない様子。
遠巻きに見ている女の子達がグレイ先輩に近寄れないのは。
本を読んでいる時が一番幸せそうな笑顔を浮かべているから――…。
「ねぇ、ルーシィは本が好きなの?」
「うん!すっごく大好き!」
“読んでると、つい時間が過ぎるのを忘れちゃうんだ〜”と笑うルーシィ。
(やっぱり、似てるわよ。貴女達)
きっと、近い内にルーシィはグレイ先輩ととても仲良しになる。
果たしてそれが正解かどうか。
分かるのは、まだもう少し先の話――…。
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2011.02.11
グレイ先輩ー!
私、アタックしていいですか。←
レビィちゃん、鈍感なようで実は鋭い。
song:ロマンティックあげるよ