幸福論
□幸福論Z
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【言っただろ?始まりはやはりあの日、と…】
それが先ほどの問いとどう関係あるのか?アスカは思ったが口を挟むことはせずに次の言葉を待つ。
あまりのもどかしさにどうにか(もう既に狂ってしまっているのだが)なってしまいそうだ。
アスカの心情を知ってか知らず、九尾は数秒考えるようにした後口を開く。
【正確には、主は成り代わってはいない。言うなればそう…我と同じように口寄せされた】
『…どういう、意味だ?』
掠れた声でアスカはいった。成り代わった理由もわからないが、九尾が言った意味もまた分からなくなっていた。
九尾は【言葉道理だ】と言う、ますます意味が分からない。……九尾が語る全てが、アスカの予想を尽く覆した。
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【何度も言うがあの日、全ての始まりであるあの日、この世界…裏の世界のナルトとやらは死んだ。生まれた時息をしていなかったらしい…】
無情なその言葉は更なる混乱を生んだ。この世界のナルトは死んで、…いた?意味も無くその言葉を繰り返すアスカ。
なら今ここに存在している私は何なのか?成り代わったのではないのなら一体……
私は何故ナルトの姿をしている?
疑問を解消するはずの九尾との会話は新たな疑問を次々と生んでいった。
もしや私は本当にナルトじゃなかったのか?……そんなわけあるはずも無いのにやはり確認してしまう愚かな私。
水鏡に映る自分を見るが、くたびれ汚れているし赤黒いものが付着しているが間違いなく金髪で、死んだ魚のようにくすんで安いガラス玉のような瞳だが、間違いなく青い目、
極め付きは皮膚の再生で薄れてはいるがヒゲのような3本線の痣……見間違えるわけも無くナルトの姿。………本当に九尾は何を言っているんだ?
訳が分からないと困惑した表情で水鏡に映る自分のその隣に映る九尾に視線を向ける。
【ここからは一度しか言わん】
九尾はそう言って……水鏡に映る困惑した表情のアスカに時間が無いとでも言うかのように(実際そうなのだろうか)アスカに告げる。
そして、アスカのその困惑を拭う為に口を開く九尾。………何故九尾は急いでいるのだろうか?時間がないとは、何の時間なのだろうか??
やはり九尾のその行動に、アスカは後から後から疑問が浮かび、不思議そうに九尾を見ながらその言葉に耳を傾けていた。
【我のような大妖怪を封じるには、命と引き換えになる力と臍のを切ったばかりの生きた赤子……人柱が必要だった。
赤子はこの世の悪を全く知らぬ無知で無垢な存在、だからこそ異形の者を封印することが可能だった。
特に臍の緒を切ったばかりの赤子は自分の中に"何か"が入っても拒否反応を起こして死ぬことなどなかった。
いくら赤子だからといってもほとんどは拒否反応で"中の者"と共に命を落とす。四代目とやらはその事を考えに入れて我を封印しようとしていた。だが………】
九尾がそう言葉を切って言わんとする言葉を、アスカは瞬時に察して心の中で(精神体なので今の自身が【心】なのかもしれないが)呟いた。