幸福論

□幸福論V
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『(ッ……痛ぇ……)』




アスカは口元から流れる赤い液体を拭った。

身体には所々に痛々しい傷がつけられ、痣ができ腫れている。

急所は逃れたがわき腹には軽くは無い切り傷が無数にあり血がにじんでいる。




『(………痛ぇ…)』




今アスカがいるのは木の葉の商店街の路地裏、つまり裏道。

人気が無い為か【大人達】はやりたい放題やってのけた。

暴行、暴走、暴力、その他色々……殺人未遂と取っても間違いではない。




『(ナルトもこんな人生ばっかだったのかな?幼少時代………)』




ふと、アスカはそう思った。

先程まで行われていた行為は九尾に対する憎しみから起きた醜い行動。

里の大人達はそれが当然の事のように醜い感情の視線を向けて

黙って眺めるかまたは参加する。残念ながら私は反抗してはいけないようだ……


立ち上がろうとした所にまた「化け狐はどこだ!!」と罵声が聞こえる。




『(ああ、またか……)』




また始まるであろうあの行為を想像して立ち上がる気力がなくなった。




「いたぞ!!!」




「化け狐!!まだ木の葉にいやがった!!」




路地裏の入り口にまた大人達が集まる。その手には凶器、その目には狂気。

九尾に回復力もあまりの暴行の多さに追いついていないようだ。

心の中で溜め息を吐いて目を瞑った。

大人達が逃げられないように自分を囲む。





さあ、血祭りの始まりだ……










──────
────



………身体の感覚は確かに【痛い】とは感じているのだが、

意識は他のほうへと向いていた。相変わらず殴られ蹴られだが、

未だ凶器は使っていないのでまだ自分は死んではいないらしい……

アスカはそれを嘲笑うかのように冷めた目で見ながら、

表情は怯えて必死に自分を守ろうとしている幼児を演じた。




「その化けの皮、剥いでやる!!」




一人がとうとう凶器の刃物を取り出し刺そうとする。

生憎と自分は死ぬ気は無い。さり気なく急所から逸らしたが

身体に激痛が走り一瞬意識が飛びそうになる。

アスカは何故今こんな状況に陥っているのかを思い出して心のなかで


          笑った


それは今の状況では有り得ない感情………。










(両者お互い狂ってる……そんなこずっと前から知っていた。)
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