幸福論

□幸福論U
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『(ここ……どこ?)』




アスカは起きたばかりの霞んだ頭だ周りを見回した。

暗く闇に覆われた、おそらく部屋。自分は赤子の為の籠にいれられて台の上に寝かされていた。

ロウソクの明かりで灯されて、かろうじて見える範囲には自分を取り囲むように何人かの人がいる。

その中に見知った顔の人物が一人いて、そちらに目を向けた。




………それは「火」と(やけに達筆に)書かれた笠を被る、生きてきた年月を語るかのように

顔に皺を刻み、白い髭を生やしている老人…………NARUTOの漫画の登場人物である三代目火影。


その人物を目にとめた途端、鮮明にある映像が頭の中に浮かび上がる。まるでフラッシュバックするかのように……鮮明に……。




───地の底から響くような轟きが聞こえ、赤い九本の尾をもつ禍々しい生き物。




それを黄金色の髪の青年が印を結んで何かを唱える。……周りには忍びと、確かに生きていた者達の屍。

突然、自分の腹部に強烈な衝撃を感じ、その部分が信じられない熱を一瞬もつ。

それがおさまった途端、その青年がゆっくり倒れやがて……動かなくなる。

しばらく忍び達から沸き起こった歓声が段々不安な呟きとなりざわめき出し、

その忍び達が一斉に黄金色の髪の青年へと群がり

自分はその側で必死に声を押し殺してそして───




思い出した。完璧に思い出した。じぶんはNARUTOの主人公の『うずまき ナルト』に

どういうわけか成り代わったのだ。……どういうわけかテロに殺されて…。

周りはまだ何かをヒソヒソと話している。その目線は………全て自分。




『(それもそうか……。)』




何せ自分は腹に木の葉を潰そうとした【九尾】を【封印】してるんだ。

そう思ってまだ据わっていない首を自分の腹部へと向かせた。

見えたのは漫画でしか見たことが無い【封印式】もうあの時のように熱くはない。

気付けば三代目が何かを言ったのが元で皆一人一人部屋を出て行った。

………部屋にいるのは自分と三代目と、そして分からないが多分いるはずの暗部。

三代目は悲痛な顔をして自分の方へと顔を向けた。




「何故こんなことに………」




そりゃマダラが契約なしの口寄せをしやがったからだろ。アスカは思った。




「本当ならこの里で一番愛されるはずじゃった子供じゃったのに……」




そりゃそうだろ、父親が木の葉の火影で四代目の波風ミナトなんだから。と、またアスカは思った。




「すまぬ……アスカ…わしはお主に何もできぬ」




嗚咽を噛み殺したような声で呟いた三代目に、まだ喋る事ができない口をゆっくりとだが………アスカは開いた。

その意味が三代目に理解出来たかは分からないが、アスカは必死に声にだした。




『(ごめんなさい)』




心からの言葉ではないけれど……なんとなく本当に生まれるはずだった『うずまきナルト』を愛した三代目に、

成り代わってしまった謝罪を口に出して、その罪と責任から逃れたかったのかもしれない………。






      ごめんなさい






(許されるようなものではないけど言えば楽になると思い込みたかった。)
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