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□死こそ至上の愛だと笑った
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今の若者は苦しい想いをするとすぐに、死にたい、と言う。出来もしない自殺を考える。
わたしもそんな若者の中の一人だったりする。臨也にフラれてこれからどうしたらいいのか分からない絶望感を抱きながら、生きていくことは難しいと感じていた。

死んでしまいたい死んでしまいたい死んでしまいたい。強くそう思っても実行にうつせないのは、勇気がないのと少しばかりのこの世への未練が足止めをしているから。




一人で受け止めるには苦しすぎて、誰かに想いをきいてほしくて、一番の親友と呼べる友達に電話をかけた。


3回のコールの後、やっと電話が繋がった。



「もしもし、わたしだよ。ねぇ、わたしやっぱりフラれちゃった。どおしよう‥もう死んじゃいたい。」


誰かに心配されたかった。そんな思いから、死んじゃいたい、なんて言葉を発した。



「もしもし、聞こえてる?」



数秒たってから予想もしていなかった言葉と、思いもしていなかった声が受話器から聞こえてきた。



「別に死にたいなら死んじゃえばいいじゃないか。誰かに聞いてもらう必要なんかない。思った通りに実行すればいいだけの話じゃないか」



「な‥んで‥臨也が‥?」



「掛け間違えちゃったの?友達に悩み聞いてもらおうと思った?残念。君がかけたのは俺の携帯だよ。まさかよりによって、自分をフった張本人に掛け間違えるなんて、君もツイてないねぇ。あっはははは」



電話の向こうで臨也はのんきに笑ってる。あぁ、もうむかつく。掛け間違えた自分にも、のんきに笑っているあいつにも。



「わたしは‥!臨也に断られて本気で苦しいの、今なら死んじゃってもいいと思ったの!」



わたしは涙をこらえ鼻水をすすりながら電話の向こうの臨也に叫んだ。でも返事はやっぱり予想外で。だったら死んじゃえばいいじゃないか、さっきも言ったでしょ。なんてやっぱりのんきで。
ムカつくけど臨也の言っていることはあっている。死ぬ勇気もないくせに、周りからの心配を集めたいから、死にたいなんて使ってみたけど実際は死ねない。

それでもわたしは‥‥
「死」を考えてしまう程に臨也が全てだった。



臨也から予想外の返事を
もらったわたしは言葉を詰まらせた。

そんなわたしにお構いもなく、臨也は楽しそうにペラペラとしゃべり始めた。



「どうせ死ねないくせに死にたいだなんて、馬鹿馬鹿しい。
あっ、でも「俺のことが好きすぎて想いすぎて、死んだ女」ってのは俺の記憶に一生残るかもね。あっはっは、おもしろいなぁ。「死」は君が俺に示せる最高で最上級の愛かもしれないね。」



臨也は電話の最初から最後まで笑っていた。楽しそうだった。
わたしの「死」は臨也に愛が示せるのか。だったらいっそのこと、このままなにもなくだんだんと臨也のことを好きだった記憶を忘れながら生きていくよりも、臨也が今まで見てきた全てのものよりも美しく、臨也の目の前で死んだ方がわたしにはいいかもしれない。




(死こそ至上の愛だと笑った)


(臨也、あなたを想うと)
(死ぬのなんか)
(怖くないかもしれない)
(わたしに死をすすめたその笑いですら)
(愛しくてしょうがないのです)



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10.08.01
 書いていてとても楽しかったです(^^)参加させていただきありがとうございました!
最期の恋は叶わぬ恋となり散り果てた 様に提出します。


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