テニスの王子様
□片恋の悲劇
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そっと囁くような自分の息遣い、
指先に響く君の心拍。
いつか君に触れた唇が、噛み締める深紅に濡れた。
「殺すの?」
酷く自然だった。
微笑にまで見える程の余裕は、私の力を惑わせた。
「ね、え――――」
私の掌に纏わり付く絹のような色素の無い肌。血の通わぬ白い首筋に、赤いシルシ。
「要らない!もう、要らないよ…!!」
隣に君は居た。
その手に握られているのが私の手では無かったとしても、ただ、隣に居た。
「全部じゃないなら、要らない――――」
遠い記憶の最中、君に触れていた唇を濡らす深紅が、君の頬に影を落とした。
「せ…いち…っ」
もう、私にしがみ付くことは無い。
もう、私に夢を語ることは無い。
もう、私に微笑むことは無い。
もう、私に依存することは無い。
「貴方が悪いんだ…!」
精市の雪の様な首筋に、真っ赤な華が一輪咲き誇っていた。
色に失いを見せないその華に一瞥をくれると、私達二人のこれまでもこれからも否定された気分になった。
「他の、おん、な…なんて…ッ」
貴方が変わらずに私に、私だけに、たった一つの愛をくれたのならば。
罪に溺れる片恋の煌めき
(いつも余裕綽々に笑って、)
(はぐらかしてばかりだったね)
→補足