*イナズマイレブン*2

□月明かり
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・映画「グリフォン」の妄想ですが、詳しいネタバレはありません
・特訓1日目の夜、という設定で




皆が布団に潜り始めた時、風丸はその場に不動がいないことに気づいた。
円堂や吹雪に訊いてみるも、返ってくる言葉は「知らない」だけ。

風丸はため息をつきながらも、ブランケットを二枚抱えて外へと出た。


何にも邪魔されない月の光が島を照らす。ただまだ建物内の方が明るかったために、風丸の目はその明るさに慣れていないのかほとんどのものが真っ暗だ。
このままじゃ捜すのも難しいじゃないか、と肩を落としながら数歩前に出る。すると横から「風丸?」と捜し求めていた声がした。

「不動!!何処かに行く時は一言言えって、」
「へいへい。…で、捜しに来てくれたんだろ?」

風丸の目が慣れていき、不動の体や顔が目に映る。不動は樹に凭れながら座っていて、風丸の方を見つめながら笑っていた。

「まぁ、もう皆寝始めたし…」
「へぇ、だったら好都合じゃねぇか。こいよ」

不動がポンポンと自身の左側の地面を叩く。そこに腰を降ろせという意味なのだろう。
ちゃんと目が合わせられるように左側なのは、もう定位置なために風丸は理解していた。

顔を少し赤くしながらも素直に風丸はそこに腰を降ろし、不動にブランケットを一枚押し付ける。不動はそれを受け取り羽織った。もう一枚はすでに風丸に羽織られている。

体を震わせ、凄く寒いじゃないか、と風丸は呟いて不動の肩に頭をのせる。不動は「まぁな」と返し、風丸の肩をそっと抱いた。
一瞬強ばる風丸の肩に、いい加減慣れてくれねぇかなぁ、と不動は内心笑った。


別に何か会話をするという訳でもなく、ただただ寄り添う二人。暫くして、風丸が「なぁ」と不動に問いかける。

「なんだ」
「影山、…甥がいたんだな」

風丸の肩を抱く手に力が入る。禁句だったか、と風丸は息をのんだ。だがそうでもないのか、手の力はだんだん緩んでいく。

風丸はその時初めて、地面から不動へと視線を移した。不動は月を見ているのか、顔をあげて何処かをぼんやり見つめているようだった。

ああ、やはりダメだったかと風丸は目を伏せる。

「……不動、ごめん」
「謝んじゃねぇ。別に俺は気にしてないし、影山を…甥を恨む気はねぇよ」

風丸はその言葉に目をおそるおそる開ける。不動の横顔がフと笑うのが見え、胸を撫で下ろした。

「むしろ、あいつには頑張ってもらいてぇんだ。影山が、影山零治が本当にやりたかったサッカーをあいつにやってもらえんなら、それで満足だよ。後悔しねぇように、な」
「……ああ」

サッカーを心から愛し、愛しているからこそ、影山はサッカーを恨んだ。
それがもたらしたモノはとても悲しく残酷なモノであったが、こうして思いは引き継がれているのだ。

例えばこの、風丸にとってとても愛しい恋人のように。

後悔しないように。不動から紡がれたその言葉は、影山の人生そのものから言っているようで、風丸はクスリと笑った。なんだかんだ言っていた不動もその思いを引き継いでいるではないか、と。

笑った風丸に気づいたらしい不動は、「何がおかしいんだよ」と白い息を吐いた。

「ちゃんと、影山の『思い』が伝わってるんだなぁって。成長を感じたんだよ」
「馬鹿か。10年も経てば成長するんだよ、人は。…まぁ、」

不動は風丸を一旦離し、向き合うように体を動かす。そして風丸の頬に手を添えれば、風丸の肩がピクリと跳ねた。

「お前…いちと、円堂達のおかげだろうけどな」
「…今日の明王は随分素直なことで」
「るせー。いつもと違う環境にいるせいだ」

不動が風丸の唇に食らいつく。風丸は抵抗することなくそれを受け入れ、頬に添えられた手に自分の手を重ねた。

少ししてお互いの唇を離す。銀の糸が二人の唇を繋げていたが、不動が立ち上がったことによって簡単に途切れてしまった。

「戻るか。さすがに冷えて―…」

帰ろうと言った不動の指先が、くい、風丸に引っ張られる。言葉を止めて「どうした」と不動は首を傾げた。

「…今日は二人で、このまま朝までいたい」
「……は?」

風丸からの珍しい我が儘。最初は舌を巻いていた不動であったが、「しょうがねぇなぁ」と笑って再び風丸と寄り添った。

風丸は満足したように笑って、「おやすみ」と恋人に告げた。



二人を照らす優しい月明かりは、誰かがサッカーを見つめている眼差しのようだった。



明かり
(おい風丸。風丸。…いち?)
(……)
(ってもう寝てんのかよ…『なんだこの生殺しな状態は!!』)


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輝くんの存在は明王にとって大きかったのではないかなぁ、と。
てなことでイチャイチャしながら言ってもらったけれど、なかなかいい台詞が思い付かない

イメージを壊さないように伝えるのは難しいと痛感しました

ほんと、輝くんには後悔しないで好きなサッカーをしてもらいたいです

それにしてもデレしかない

20111229

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