煌めきの彼方

□夜の帳の向こう側
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 やさしい夜があたたかい小さな家を覆う頃、この家に住む二人は共に眠りにつく。

ノリコはベッドへと入ると黒髪の美丈夫の腕の中へとすべり込んだ。
強くたくましい腕はやさしく彼女を掻き抱く。
彼女はその腕の温かさに今の幸せを感じていた。

天上鬼と目覚めではない二人の穏やかな夜はいつもこうやって更けて行くのである。
夢路を辿り始めたノリコの耳にどこからともなくやさしい慈しみ深い歌が響いてくる。
それはこの世界の子守唄といわれるものであった。

ノリコもよくシルヴァやゴルヴァに子守唄を歌ってやるが、
それはノリコの世界のものである。
この2頭はなぜかこちらの世界の子守唄より
ノリコの世界の子守唄のほうがお気に入りであった。


どこから聞こえるのかそれはかすかな音で
誰が歌っているのかなどはわからない。
ただその歌に込められた慈しみと愛情が
ノリコを穏やかに夢路へと導いていくようであった。


「やさしい…声…」


ノリコが眠りながら呟いた言葉にイザークはふっと微笑んだ。
イザークにもその子守唄は聞こえている。


「そうか…おやすみ、ノリコ」


「うん…おや…すみ…イザー…ク」

寝つきのよいノリコのこと。
その後すぐに眠りについたのは言うまでもない。

ノリコが以前とは違い格段に寝つきがよい日が増えたことをイザークは感じていた。
彼女は安心したら眠ってしまうという変わった癖がある。

二人で逃避行を繰り返しているときには、
その数はやはり少なかったのである。

その頃のことを考えると心が痛むイザークではあったが、
いつしかノリコの穏やかな寝息にイザークも眠りへと引き込まれていった。



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