星光夜想曲

□聖夜の奇跡
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「メリークリスマス!景時さん。
今日はこういう風にいうんですよ?」


愛らしい笑顔をその顔に浮かべうれしそうに景時に声をかける望美。
景時は驚いて目を覚ました。

まだ、眠っていた景時を起こしに現れたのは
妹の朔ではなく望美であった。


「お、おはよう…望美ちゃん」


景時はまだ状況がよくつかめない。

そもそも男の褥に朝とはいっても身内以外の女の子が現れたのだ。
それだけも十分驚きに値する。


「おきましたか?
今日は私より景時さんのほうがお寝坊さんですよ!」


「う、うん。そうだったみたいだね」


景時はいまだ驚きが冷めない表情を望美に向ける。
そして少し顔を赤らめた。


「あ、あの…望美ちゃん。
起こしてくれてうれしいんだけど…

そ、その…そこからどいてくれないかな?
じゃないとオレいつまでも褥から出られないから…」


望美はハッとしたようにあわてて
馬乗りになっていた景時の身体から離れた。

まるで小さな子供が父親を起こすときのように
景時の上にのっていたのである。

もちろん望美に艶めいた理由などあるわけではなく、
ただ兄のような父のような雰囲気の景時に遠慮がなくなって、
小さい子供のような起こし方になってしまっただけだ。


「ご、ごめんなさい…重かったですか?」


その証拠に望美が気になるのは自分の重さだけなのだから…

景時はひとつため息をつくとゆっくりと褥にその身体を起こす。

そしてやさしく微笑ながら望美に話しかけた。


「ん?大丈夫だよ?
望美ちゃんくらいならオレにとっては軽いくらいだからね。
きっと抱き上げても羽のように軽いんだろうね。望美ちゃんは」


「そ、そんな…羽ほどは軽くないと思います」


顔を紅くして俯く、
そんな望美の素直な反応に思わず景時は声を出して笑った。


(やっぱり君はかわいいね…
望美ちゃん…でもオレって君にとって…)


望美は重くないといわれたことがよほどうれしかったのか、
満面に笑顔を浮かべている。


(はあ〜その笑顔…オレにはきついよね…)


景時は苦笑を零す。

馬乗りになって起こす起こし方といい、
軽いといわれて喜ぶさまといい、
どう考えても甘い類のことではない。



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