煌めきの彼方

□穏やかな光の中で
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ザーゴとグゼナの国境近く白霧の森を抜けた先にある小さな町。
田園風景が広がるこの町には
素朴で穏やかな人たちが暮らす。

都会のような華やかさはないが
ノリコとイザーク2人が暮らす分にはなんの問題もなかった。

イザークはザーゴとグゼナ両国から
兵士を鍛える師範の仕事を請け負っているが、
それとてアゴルやバラゴと一緒である。

時には他国の要人の警護などの要請もあり、
2人食べていくのに困ることもない。

いや十分すぎるほどである。

住む家だとて大きな屋敷に住んでもかまわないくらいであるが、
静かに暮らしたい2人は必要以上に広い屋敷など望まなかった。

小さな暖かい家…2人の体温がすぐ傍に感じられる距離、
それこそが2人の望みである。

だから町の人たちはイザークがどんな仕事をしているか
どういう立場にいるかなど知らない。

仕事はしているという程度の認識である。

だがノリコのやわらかい雰囲気や、
イザークの不器用なながらも示すやさしさを感じ取れる町の人々は
この若夫婦を概ね快く受け入れていた。


イザークとノリコが朝食を済ませ一息ついていた頃、
この2人の暖かい家を訪れる者がいた。


アゴルとジーナの親子である。


「いらっしゃ〜い、待ってたよ」


ノリコに明るく話しかけられ、アゴルもジーナも笑顔になる。
彼女のこういう屈託のなさは
周りを明るくさせる力を持っているようだ。


「すまん。

朝早くから悪いんだけど…ジーナを頼めるかな?」


アゴルは少しバツが悪そうにノリコに断る。

ノリコはこれにも笑顔で答える。


「別にいいですよ?

だってイザークも一緒にお仕事でしょ?

ねえ〜ジーナ。

今日は一緒に何しようか?

お菓子でも作ろうか?」

「うん!」


ジーナは元気よく返事しそして自分の手をノリコへと差し出した。

ノリコはそのジーナの手を引くと居間のほうへと歩き出す。

ジーナが来るといつも座っている場所へと彼女を連れて行ったのだ。

後に残された男たちは、仕方なくといった態で、
ノリコが出しておいてくれたお茶を飲むためダイニングの椅子へと腰掛けた。


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