菓子好き男子と運動好き系男子の恋の話

□救世主
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救世主



なんて事を考えながら目をつむると、ガチャガチャと騒がしい音が耳に入り閉じかけた瞼を開き。
音のする方を見ると、既に越谷先生はドアの前にいて

「部活なら今日は休みだが、誰かな。」

腕組みをして少し強い口調で言っている、どうやら開ける気は皆無のようで。
まぁ…俺だってこんな状態だから開けられても困る、大いに困る!

ドアから一歩も動く気配のない越谷先生を見てから、ファスナーを音が鳴らないように静かに上げてベルトをし直す。
ある程度身支度を整えてからゆっくり起き上がり教卓から降りて身を隠すように、生徒用の机の後ろをコソコソと身を縮めて歩き。
越谷先生の後ろまで辿り着くと、床に散らばった脱がされた制服を拾い上げて身に付ける。

そんなことをしている内に何者かがドアを開ける、越谷先生は鍵を閉めたつもりでいたために驚いて相手を見ている。
俺からは丁度見えないところにいて…と言うよりは、早く制服を着てしまいたかった。

「…結城…お前、美術部でも何でもないだろう。早く帰りなさい」

「いや…そうなんすけど、中村くんと帰る約束してて。…越谷先生、確か一緒に中村くんと美術室に来ましたよね?」

鋭い口調で言う結城の声を聞きながら目をパチクリさせ

…約束なんてした覚え、ない。
なのに来てくれた。
あの不安げな表情はこの事を察して…だったのか?


何はともあれ、俺は机の後ろから脱兎のごとく飛び出して。
越谷先生の横をすり抜けて結城の後ろに行き。

「ほら…いた。」

俺の姿を見て結城は勝ち誇ったような笑みを浮かべると、越谷先生の方を向いてそう言って。
越谷先生は真顔のままで俺を見、結城を見た。
表情は変わらないのに何だか怖い、むしろ変わらないから怖いのか…俺は威圧感に負けて目を反らす。
結城は反らすことはしてないようで、身動きすら感じない。
実はすごいヤツなのかも。

「じゃあ…サヨナラ、越谷先生。゙僕達゙帰ります」

僕達を強調して穏やかにそう言うと結城に手を引かれ、越谷先生に背を向け歩き出し。
その瞬間、ほんっと一瞬結城に向けられた越谷先生の視線がゾクリとするほど嫌なものだった。



 

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