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□図書室と小さな風
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 次の日
 なぜかあの先輩のことが頭から離れず、放課後図書室に向った

 昨日とほぼ同時刻
 変わり映えのない図書室


「また来たのか」


 どこから現れたのか
 その先輩は私の右側に立っていた
 片手には本を持って、相変わらず少し目つきの悪い目を向けて


「は…はい」


 私の声も昨日と変わらず震えていた
 なんで、こんなに恐怖心を感じるのかわからない


「なにか借りていかないのか?」


 昨日と同じ質問を投げかけられた
 震える体をいなすように自分の体を腕でつつむ

 自分の熱を感じて少し安心できたのか、震えはおさまってきた

 私は勇気を出して震える声で先輩に問いかけた


「おすすめの本は…ありますか?」


 先輩の顔が一気に明るくなった

 先輩が手渡してくれたのは少し古い詩集
 四季について書いているものが多いようだ


「君にはそれが合うと思う」


 短い言葉で先輩は言った
 でも、先ほどまでの鋭い目つきはどこにもなく、柔らかな微笑を浮かべていた



 体の震えはとまっていた



 その詩集に書かれていたのは四季への思いだった
 この季節にどんな思いをはせ、どう感じたのか

 でも、最後のページに一行だけ短く、こう書いてあった



『人生は自分を壊しながら歩むに等しい。だが、投げ出すことはない。自由に生きろ』


 一人の詩人の小さな言葉
 でも、この言葉が私にはひどく響いた



 
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