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□図書室と小さな風
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 きっかけはふとした所に落ちているもので
 気づいたときにはもう歯車はすでに回っていたりする

 いつしか錆付いて回らなくなるまで
 その歯車は回り続ける



 風が段々と冷たくなり始めた9月終わり

 家に帰る気にならなかった私は図書室に足を伸ばしていた
 滅多に来る場所ではないけれど、人気もなくてボーっとできる場所なんてここくらいしか思い当たる場所がなかった

 開いた窓から風が吹き、枯葉が舞い上がる
 一枚、二枚と窓を潜り抜ける
 カーテンになでられ切なく枯葉は床に横たわる

 夕日が差し始めた
 もう6時を当にすぎているだろう
 そろそろ帰らないと道中真っ暗になってしまう
 机にもたれかけていたカバンを拾い、図書室を出ようとした


「おい、何か借りていかなかのか?」


 ふと、声が聞こえた
 振り返ると図書室のドアにもたれてこっちを見る男子生徒がいた
 たぶん、学年カラーから見てひとつ上の学年だと思う

 鋭い目つきで見つめられ少し背筋がぞくりとした
 声音も低めで威圧感がある

 無意識にカバンで顔を少し覆い、体が固まった


「い…いえ、借りません…」


 声がカタカタと震えた
 初対面の相手になぜこんなにも恐怖しているのか自分でもわからない
 体がいうことを聞いてくれない


「そうか…」


 しかし、先輩らしき男子生徒は拍子抜けするほどあっさり図書室に戻っていった
 瞳が少し寂しげに見えたのは気のせいだろうか

 
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