「「ブン太にぃ!ハッピーバースデー!」」
俺の弟がワイワイと俺の誕生日ケーキを母さんから受け取って俺の前に持ってくる。
これは毎年のように行っていた行為だけど、今でも嬉しい出来事の一つだった。
そりゃあ、自分の可愛い弟が俺の誕生日祝ってくれるんだから幸せだろぃ?
とにかくワイワイと盛り上がって、ロウソクを消して、クラッカーを割って。
この誕生日だから見れる日常は俺にとってかけがえのないものだった。
「ねぇ、ブン太にぃは誰かに祝ってもらった?」
「幸村くんに柳に仁王に、真田に…、あ。」
「どうしたの?」「どーしたのー?」
俺は大切な事を忘れていたようだ。
そうだ、アイツだ。アイツとの約束を忘れてしまったようだ。
約束は夜7時で、今は7時30分。
約束の場所まで30分確実に遅刻じゃねぇかよぃ!
俺はいつも走らないけれど、息を切らせながら走った。
でもよ何でこんな時間なんだよぃ、俺だって夕飯っていう大切な事情があるのにさ。
心中は少し悪態をつくも一生懸命走る。
「ブン太の馬鹿っ!遅いよ!」
「わりぃ!すっかり忘れてた!」
「あーもー、はいコレ。あげるから弟くんと食べてよ、もう夜遅いからさ。」
そういって俺の前に差し出したのはいつも俺が食うグリーンアップルのガムと。
―何か入ったケーキのボックス。
俺は一言食べていいか、と了承を得てから一つのケーキを口にした。
俺の好みを知っているからだろうか、とても美味しい。
俺が美味しい、と笑いだすと急に顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
「こっち向けよぃっ、上手いケーキがまずくなんだろ?」
「うっさい…!甘党男め…!」
「まさか、俺の天才的な笑顔に惚れたとか?」
「…ッ、あっアンタが可愛い笑み見せるからいけないんじゃない!悪いッ?」
まさか図星かよぃ…!予想してねぇぞ!と内心凄く焦った。
そして帰る、と一つ俺に告げてその場を駆け去っていく。
俺はケーキとボックスで手がふさがっていて手を掴むことが出来なかった。
俺は食いかけのケーキを食べてから、携帯を取りだして電話をかけると数コールで電話に反応が帰ってきた。
「≪HAPPY BIRTH DAY ブン太≫」
電話から聞こえてきた声はまだ少し照れくさそうで、俺は少し笑みをこぼした。
とにかく今はまず家に帰って、弟たちにアイツを紹介するか!