『明日への歌』
□二ノ巻『日常』
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目的地はうちは一族の民家の近く、しかしうちはのものではない民家の奥。
広くて寂れた墓地。
その墓地は、何処かの家紋が描かれた石版を中心に取り囲むように墓石が並んでいる。
その中の一つの墓の前で3人は立ち止まる。
スミレはその墓に先程摘んでいた花を供え、手を合わせる。
『父様!母様!元気?紅葉兄ぃ!牡丹兄ぃ!仲良くしてる?』
スミレは墓へと向けて声を掛ける。
「今日は母様の好きなユリの花だよ。」
ここはスミレの一族、涼風一族の墓場である。
そして、今3人が立っているのはスミレの父親、母親、2人の兄が眠る墓石の前である。
スミレはいつも決まって家族の誰かしらが生前好きだった花を墓石に供える。
最愛の家族が眠る墓に向かって手を合わせるスミレの表情はとても穏やかであった。
だが、イタチにはその表情に隠された、スミレの苦しみが見えていた。
まだ…2年の出来事がスミレを苦しめているようだ。
おそらく、あの出来事はこれからもこの子を戒め続けるだろう。
あの…2年前の事件…。
イタチはサスケと共にスミレの両脇に並び、手を合わせる。
そっとスミレの顔を盗み見ると、彼女は目をつむり、穏やかな表情で手を合わせている。
その表情に隠されている傷が見ていると痛々しい…。