ブリキの歴史覚帳

□第二話 時空を超えた迷子
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ー…ガバッ…









「うそ……ここ…もしかして………戦国時代……?はっ!ほ……蛍さん!?御幸さん!!??」





突然放り出された荒野で周囲を見渡すが、二人の姿は勿論、人影の一つすら見つけられなかった。

こまは現状を理解できないようでキョロキョロとあたりを見渡した後、真っ青な顔でその場にへたり込んでしまった。




(何で誰もいないの…?ここどこ……!!!!)




こまは必死に動揺を落ち着けるように手を握り締めると、自分の手にあるガンウェアの存在を今更ながら思い出した。




「そうだ…これで通信…!!蛍さんと…みゆ…いや、御幸さんはいいや。(怒られる気配を察知。)」




こまがガンウェアで蛍に通信を繋げようとすると、

それよりも一足早くこまの耳には聞き覚えのあるドスの効いた低音が響いた。





「てめえアホか!!どこにいやがる!!!!!!」

「ひええええっ!!み…御幸さん……お疲れ様です……すみません…。」



「こまちゃん!!無事なん!?」

「ほ…蛍さん…はい、無事です…!!」





二人の声を聞くなり張っていた気が緩んだ様にこまの目からは涙が溢れていた。

この時ばかりは御幸の罵声でさえも、心の底から安心させられていた。





「ったくお前が無駄に動くから…まあいい、説教は帰ってからだ。そっちはどこに出た?場所と年号と月は?こっちから発信機が作動しないから年が違うはずだ。」



「う……はい…場所と年号…?今は森の近くにいます、あと寒いです…。」

「てめえ…そんなヒントごときで何千年の時間から探せるかボケ!!」



「御幸落ち着いて!!こまちゃん、場所に他に手がかりか何かない?せめて年号と月、場所が分かれば僕達二人が迎えにいけるけん!!」




「わ…分かりました…あ、今ちょっと人影が見えたので聞いてみます!!」


「え!?あ…ちょっと待ってこまちゃん!!」





森の先に少し動く人影を見つけたこまは、蛍達との通話を一旦保留にし、

その瞬間、妙な匂いを感じたが、とにかく戻りたい一心だったこまは足早にその人影に近づいた。





「あの…すみません、ちょっとよろしいですか?今の年と月を教えていただきたいんですが…」



「………。」

「……あの…?」









ー…ドサッツ………





「へ?き…‥きゃあああああああああああ!!!!!!!!!!」


「な…!?おい!!どうした!!」

「こまちゃん!?何があったん!?」





「し…ししししんでる……っ!!!」






こまが話しかけた男は木にもたれかかった状態で息絶えており、こまが触れたと同時に血まみれの体は地に臥せってしまった。

突然の出来事にこまは震える手で口元を抑えると、必死でその場から離れた。





「死体……?おい、そいつなんで死んでる!?格好はどんなだ?紋はついてないか?」



「なんで死んでる!?見てこいって言うんですか!?」

「お前もそうなりたくなかったらとっとと見てこい!!」










「………。」

(戻ったら絶対こんな仕事もう辞める…絶対辞めてやる……。)





こまはそう自分に言い聞かせながら、御幸に言われた通り恐る恐る倒れた遺体に近づいた。

出来るだけ顔を見ないように目を細めながら状況を確認すると、また一目散にその場を離れた。





「よ…鎧と旗みたいなのも見えました…あとその旗に紋が…」

「どんな紋だ?」



「ひっ……ひし形が4つ…。」




「……武田か、ちっ…」

「こまちゃん、とにかく今すぐその場所から離れて!!」



「ど…どういう事ですか!?」

「そこは合戦場になってる!!とにかく早く逃げろ!!」




「へ…?は…はいいいっ!!!!!!」




御幸の声にこまは弾かれるようにそう返事をしたものの、こまの足はガクガクと震え、上手く走れなくなっていた。





「甲斐周辺におることは間違いないみたいやね…あとはどの時期におるか…合戦しとるんなら秋やろうけど、武田は戦が多いからあんまヒントにならんなあ…。」

「合戦相手が誰か分かれば少しは手がかりになるんだけどな。」






「……こまちゃん…絶対に助けるけんね…!!」














ー…ドドドドドド…




「た…助けてええええええええ!!!!!!!!」








一方、言われた通りその場を離れたこまだったが、合戦場から離れたつもりが実は逆に近づいており、完全にピンチに陥っていた。





「逃げろってそもそもどこに逃げれば安全なのかも分かんな…」

ー…ドスドスドスッ


「ああああああ矢!!矢ああああ!!」





こまの横をかすめた弓矢に飛び交う石つぶて。

こまは一体どこが安全なのかも分からぬまま逃げ惑い、一軒の物置小屋のような建物に身を隠した。





「はあ…はあ…こ…ここなら…?」

「女…?」



「へ?あ…私怪しいものではなくて…あ…あの、もし良かったらここの場所と年と月を教えては頂けないでしょうか…」



「女だ!!捕まえろおっ!!!!」

「な‥なんで…ぎ…ぎゃあああああああ!!!!」





小屋に潜んでいた兵から何とか逃げたこまは、必死に逃げながらも栞奈に言われた言葉を思い出していた。





(栞奈さんが言ってたのはこういうことだったの!?女だと見ただけで襲ってくるって人間としてどうなのよ…!!

駄目だ…死んだ人か変な人にしか出会えない…!!)







ー…ガッツ…

「痛っ……!!」

「ハア…ハア…やっと追いついた…おお…こりゃ村娘じゃねえな…別嬪だ。」





石につまずき転んでしまったこまは、あっけなくも雑兵の男に追いつかれてしまった。

何とかガンウェアを作動させようとするが、手が震えて上手く行かず、こまは時間を稼ごうと必死に嘘をついた。




「ちょ…ちょっと待って下さい…実は俺、男でして!!それはご勘弁願いたい!!」

「何じゃと!!?じゃあ武田軍の…女に見せて油断させるとは卑劣な策を!!たたっ斬る!!」





(あーーーーー状況悪化したーーーー!!!!)





「死ね!!」

「きゃあああああああ!!!!!!」





ー…バキイイイイイッツ…………!!!!







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