リバースヒーロー

□Re:3 孝之助の恋愛事情
1ページ/6ページ

.....................






ー…バサッ…バサッ…




「サンライズ結婚相談所…パートナーエージェント美合…出会い斡旋今すぐ貴方も幸せな結婚生活を…ってうぜえええええええええ!!!!

ヒナ!!個人情報から勝手に人の人生を設計しようとしてくるこいつらのサイト攻撃しろ!!ムカつく!!!!」



「…今忙しいです。」





ポストにこれでもかと言うくらいに詰め込まれていた孝之助宛の結婚相談所からのダイレクトメール。

利用したこともない施設からのお節介な手紙の山を、孝之助はぐしゃぐしゃに丸めてゴミ箱に放り込んだ。





「そんなカリカリしてないでせっかくの機会ですし行ってみればいいじゃないですか、お見合いでも何でも。」


「俺は結婚結婚ってギラギラしてる手合が苦手なんだよ!!40超えたからって焦ってると決めつけやがってこんちくしょー!!ほっとけってんだ!!」




「そんなだから今になっても独り身なんでしょー…。」





そう言って九条はすねた孝之助を見ると、呆れたように溜め息を吐いた。

朝から珍しく虫の居所が悪そうな孝之助を遠巻きに眺めていた佐奈は、不思議そうに九条に尋ねた。






『…孝之助さんって…結婚に何か嫌なことでもあったんですか…?』



「うーん…詳しくは知りませんが昔の彼女が結婚結婚うるさい人だったようですよ。

私と事務所立ち上げたばかりの頃に、電話口で喧嘩して事務所の電話線ハサミでばっさり切ったことありますからねぇ…。」





『へええ…それはそれはまた…。』

「九条っちそこ!!余計な情報佐奈に教えない!!」


「事実を述べたまでです。」











相変わらずカリカリする孝之助に佐奈はアハハと笑みを返すと、少し不思議そうに孝之助の背中を見つめていた。





好きな人との結婚なんて女からしてみれば憧れるのは至極当たり前で、

ましてや好きな人と付き合っていて年齢がある程度いけばそう言いたくなる気持ちは佐奈にはよく分かった。


だからこそ男の人はどうしてそういう気持ちにならないのだろうかと、佐奈には少し不思議に思えたのだった。





(でもその時はきっと孝之助さんは仕事を優先させたかったんだろうなあ…素敵な旦那さんになりそうなのに勿体無いなあ。

好きな人と結婚したいって…男の人はあんまり考えないのかな…?)





佐奈はそんなことを考えながら隣に座っていたヒナの顔をチラリと見上げたが、

ヒナは佐奈の熱い視線に気付くこと無く、パソコンのディスプレイにじっと視線を落としていた。





(このままだと…数年後には私も他人事じゃないかもな…。)





「……何?」

『あっ…い、いや何でもないです…!!』

「?」










そう言ってヒナは少し不思議そうな顔を浮かべながらも、またディスプレイに視線を戻した。

結婚になど今のところ無頓着そうなヒナの横顔を眺めながら、佐奈は一人小さくハアと溜息をこぼしたのだった。







ー…ピンポーン…ピンポーン…



「ん?誰だ、今日なんか予約入ってたっけか?」

「さあ…飛び込みでしょうか…佐奈さん出てもらってもいい?」



『はーい!!』

「……。」












佐奈が言われるがまま事務所の扉を開けると、そこにはスーツ姿でメガネをかけた綺麗な女性が一人立っていた。

佐奈はセールスかと少し警戒しながら声をかけると、女性はおもむろに佐奈をじいっと睨み付けた。





『えっと……あの…?』

「南在孝之助さんはいらっしゃいますでしょうか。」


『へ‥?い…いますけどあのどういったご用件で……』

「……私サンライズ結婚相談所の者でして、少々お話をさせて頂きたく…」



『サンライズ結婚相談所…?それってさっきの…』





孝之助がさっき投げ捨てた手紙にチラリと目を向けた佐奈は、少し困ったように孝之助を見た。

だが孝之助は相変わらず虫の居所が悪い様子で、これ以上刺激するまいと佐奈が断りを入れようとした…その時だった。




「南在くん、いるんでしょ?」

『へ?』


「お邪魔しますね。」

『え…あ…あのちょっと何勝手に…!!!!』





佐奈の静止も聞かず女はずかずかと事務所に足を進めると、孝之助の前に仁王立ちで立ち塞がった。

目の前に突如現れた女の姿に孝之助は驚き、咥えていた煙草をポロリと落とした。





「お久しぶり南在君、まだ結婚してなかったのね、驚いたわ。」


「熱っち!!って……な…椿…!?なんでお前がここにいんだよ…!?」





『こ…孝之助さんの知り合い…?』

「誰だあれ。」

「………さあ。」



「………。」




突然の迫力のある女性の来訪に戸惑いを隠せなかった佐奈達三人の横で、

一人何かを知っているようで、九条はバツが悪そうに顔を背けていた。





『あの…孝之助さんそちらの方は…?』

「ああ…えっと昔の俺の知り合いでだな…」



「何よ、知り合いだなんて他人行儀な。私は南在くんの"元彼女"の椿優花と申します。お見知り置きを。」







「「『孝之助さんの……元カノ!?』」」







驚く佐奈達に椿はニコッと笑顔を見せると、孝之助はげんなりしたようにハアと深く溜め息を吐いたのだった…。





.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ