リバースヒーロー

□22.父親は誰だ
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ー…ギシッ…









『っ……ヒナさ…ちょっと待ってくださ…』










「何で?」












薄暗いヒナの仕事部屋。

昨晩からの仕事をようやく終えたヒナは、部屋に訪れた佐奈の唇を塞ぎ行く手を阻むと、甘えるように抱きついた。







『何でってあの…誰か来ちゃいます…!!それに昨日からヒナさん寝てないなら早く寝た方が……』


「佐奈と寝る。」




『へっ…でもあのっ……ヒナさっ……!!!!』
















ー…ガチャ


「ヒナこのデータ壊れてたから直して欲しいってーーー………」

















『いっ…和泉さん…!!』




「……何。」



















「……何じゃねえ仕事中に何しとんじゃこのエロメガネ工工エエエエエェェェ!!!!!!」













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ー…ピーチチチチ…






「えーと、今回の件を担当します南在と…」


『橘です。』






依頼人の前で愛想よく頭を下げる佐奈と孝之助。

徹夜続きであれから眠ってしまったヒナに変わり佐奈と共に依頼を受けていた孝之助は、イライラした様子の依頼人にチラリと目を向けた。






「今回の依頼はDNA鑑定ということですが…息子さん…ですか?」




「はい、今はもう離婚している妻の子供なんですが…俺に全く似ていないんです。」





「ほう。」




「いわゆるできちゃった婚で、昔からおかしいなと思うことは多々あったんです…

それから間もなく俺達は離婚をして、高額な養育費を毎月支払ってるんですが息子が成長するにつれてその疑問が拭えなくて…本当に俺は養育費を払う"必要"があるのか知りたいんです。」





『…。』





依頼人の言葉にピクリと反応した佐奈だったが、ひとまず自分を落ち着け佐奈は再び依頼人の言葉に耳を傾けた。






「もしかしたら俺は騙されて"結婚する羽目"になって、他の男の子供に多額の金を払わされてるかもしれないなんてそれこそ詐欺じゃないですか。」





『……自分の息子じゃなければ養育費の支払いを放棄したいということですか?』



「そりゃあそうですよ。」





『でも…!!生まれた頃からずっと育ててきた息子さんなんですよね?それは…』

「佐奈。」







頭に血が上り始めたような佐奈を孝之助が静止すると、佐奈も腑に落ちない様子ながら黙り込んだ。







「事情は分かりました。息子さんのDNAを調べるサンプルは…気付かれないように採取してほしいということでいいですか?」



「はい、もしあちらにやましいことがあるなら協力してくれない可能性もありますし…そうして下さい。」







『……あの出過ぎたことを言うようですが…"結婚する羽目"って責任は全て奥様のせいなんですか?』



「そりゃそうでしょう、俺は元々は結婚するつもりなんてまだ無かったんだ。でも産みたいって言って聞かなかったのはあいつだ。」






『そんな…!!責任負う気もないくせにやったのは…あんたの方じゃないで…むぐぐ

「佐奈!!すみません〜新人なもので…。」












「はあ…。」






依頼人に暴言を吐きそうになる佐奈の口を孝之助は塞ぎ、依頼人に愛想笑いしながら頭を下げた。

依頼人は少しバツが悪そうにチッと舌打ちすると、とにかく頼みましたよと言い残し事務所を後にしたのだった。










ー…バタン!!!!





『あああああイライラします!!!!私間違ってますか!?』




「うん、間違ってないけどね、うちの収入源を断つのは間違ってるからね、佐奈。」






応接室から珍しくイライラした様子で出てきた佐奈を、孝之助がそう言いながらなだめるように笑った。







『あの男に息子への愛情ってもんはないんですか!?お金払いたくないがためにここに来たんでしょ!?信じられません!!たとえ似てなくても息子に違いないとか言えないんですかねええ!?』






「まあ難しい問題ですよねぇ…。」


「男なんてそんなもんなやつ多いんじゃねーの?」



『女の人は…大変な思いして子供産んで育てるのに自分の苦労は苦労で女性の子育ての苦労は当然とか言ってるようなもんです!!

あの依頼人の意見は支離滅裂で最っっ低です!!!!』



「まあまあ落ち着いてよ佐奈、どうしたのそんなイライラして…。とにかく本当の子供だって分かればあの依頼人にちゃんと支払えって言ってやれるよ。」






『はい……私とりあえずお昼の休憩いただきます…。』







ー…タタタタタッ





「何あれ…あいつどうしたの?」


「イライラしてますねえ、何かあったんでしょうか。」




「さあ…。」







眉間にしわを寄せたまま事務所を飛び出した佐奈を皆が不思議そうに見送ると、

佐奈は一人公園のベンチに腰を下ろしたのであった。





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