リバースヒーロー

□21.封の開かない手紙
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......................








ー…ダダダダダダ








「……ど…どうしますか…?」



「先に行って寺島の手当を!!あとこのことを組長に知らせて下さい、私はここであいつらを叩きます。」






「ですが…それじゃあ…!!」





「…いいから早く!!!!」







「………。」











ー…ドンドン!!…ドンッツ…!!!!!!!!












夜を切り裂く鈍い破裂音。




その音が鳴り止むとともにひとつの人影はそこを離れ、


ひとつの人影は姿を闇夜にくらませたのだった。






......................








ーピー…チチチチ…






『琴子さん髪伸びましたねぇ。』



「やっぱりそうよねぇ〜なんか気が付いたらまた長くなっちゃったな〜…。」











事務所に遊びに来て佐奈とお茶を飲んでいた琴子は、肩につく程までに伸びた髪を触りながらうーんと悩んだ。





「また切ったほうがいいと思う?迷うのよね〜…。」


『でも琴子さんの今の髪型も可愛いですよ?ショートが好きなんですか?』





「……私じゃないわよ。」


『へ?』






そうポツリと呟くと、琴子は目の前でキョトンとする佐奈の顔をじっと見た。



ショートが好きだと言ったのは他でもない和泉。

だがその和泉はきっとこの佐奈を見てそう言っているのだろう、琴子は少しむくれた顔で佐奈の髪に触れた。






「佐奈も髪伸ばしなさいよ、なによそのどっちつかずな髪型はぁ。」


『こ…これはあれですよ!?今流行りの前下りボブですよ!!』




「佐奈…それは前が下がり過ぎでしょうよ…。」






ー…ガチャ


「ただいま〜。」


「あ!!和泉ちゃん!!」




仕事から戻った和泉に嬉々として駆け寄った琴子を、和泉は軽くあしらいながらソファに横になった。

だが琴子はそれにもめげずに和泉の後を追うと、新しくオープンしたという遊園地の情報誌を和泉の眼前に差し出した。





「ねえねえ和泉ちゃん、これ今度一緒に行かな〜い?先週オープンしたばっかりなんだけど…」




「あ〜またいつかな〜。」

「いつかっていつよ?ねえ来週?再来週?来月?」



「だーもう俺眠ぃんだよ、他当たれ。」


「…相手が佐奈だったら徹夜続きでも行くくせに。」




「はっ?ん…んなわけねーだろ!!」





分かりやすくうろたえる和泉に琴子は更に頬をふくらませていじけると、和泉をデートに誘うのは諦めて話題を変えた。






「ねえねえ和泉ちゃん、私髪長いかな?」


「まあ伸びたんじゃねえの。」


「もうちょっと切った方がいいと思う?」





「どっちでもいーんじゃね?好きにしろよ。」






「……〜〜〜〜和泉ちゃんのバカ!!バカバカバカ!!!!」
















ー…バンッ!!バタバタバタ…




「…何なんだよ。」










勝手にしたとはいえ和泉の気を少しでも引きたいと思い切って切った髪。

分かってはいたがその和泉の言葉に、全く効果はなかったのだろうと思い知らされ、琴子はショボンと肩を落として事務所の屋上で空を見上げた。








「この髪が伸びるまでには好きになってもらうつもりだったんだけどなあ…。」




(反感買いそうだけど正直ここまで振り向いてくれない男なんて出会った試しがないからこれ以上どうすりゃいいのか分かんないわよ…。)






ー…ガチャ




「…?」


「ん?メガネ君じゃない。」







背後から扉の開く音に琴子が振り返ると、そこには少し驚いた様子のヒナが立っていた。

ヒナは人がいるとはまるで思わなかったようで、目を丸くしながら琴子を見た。





「誰…?」


「…あんた佐奈以外の女を記憶する気ないでしょ。」












自分を全く覚えてない様子のヒナに琴子はハアと呆れたように溜息をつくと、ゴミ捨てに来ただけらしいヒナを無理矢理捕まえた。





「佐奈とくっついたんでしょ?なのに何で和泉ちゃん佐奈のこと諦めないのよ〜…。」




「俺に聞かれても…。」




「もっと佐奈とイチャイチャして和泉ちゃん諦めさせなさいよメガネ君!!

…それに和泉ちゃんも報われないって分かってるくせにバカよ、何でそんなに佐奈に固執するの…?」






一刻も早くこの場を立ち去りたそうにしていたヒナだったが、少し潤んだような瞳で琴子がそう言うと、ポツリと言葉を返した。






「みんな孝之助さんと佐奈に本当に感謝してる、だから恋愛云々関係なくずっと大切だと思う。

和泉は目の色のことずっと気にしてたけど佐奈が褒めてからはコンタクトも付けなくなった。初めて認めてくれたのが嬉しかったんだと思う。」







「……メガネ君、結構喋れたのね。」



「…戻る。」

「ああああ嘘よウソウソ!!……ごめんって!!」





事務所に戻ろうとするヒナに琴子は少し笑いながら謝ると、また困ったような顔で空を見上げた。






「じゃあ私は一体どうすれば佐奈を超えられるんだろ…ねえ、佐奈のどんなとこが好きなの?」





「一言じゃ無理。」


「…ああそうごちそうさま。じゃあいっそ和泉ちゃんをまたボディーガードで借り切り続けて既成事実をってのはどう思う!?」




「和泉をボディガードで借りるのに一時間3000円×24時間=一日あたり72000円。一ヶ月借り切ると210万円。」

「ちょっとまじめに金額弾き出さないでよ!!…でも200万ちょっとで一ヶ月ずっと和泉ちゃんといられるなら悪くないわね…。」






「………ご自由に。」


「もう冗談よ!!いちいち真に受けて引かないでよ!!」











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