リバースヒーロー

□16.凸凹バイリンガル
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ー…バタン!!




「お邪魔しまーすっ!!」




朝から騒々しく開いた扉から現れたのは、久しぶりに事務所に訪れた琴子の姿だった。

琴子は事務所の奥でくつろいでいた和泉を見つけるやいなや、和泉に抱きついた。





「おっはよー!!和泉ちゃーん!!!!!」









「おわっ…な…琴子!?なんだよびっくりさせんな!!」





「和泉ちゃん、早く私と結婚してよ。」

「朝から何ふざけてんだお前は!!」





和泉とじゃれる琴子は、キョロキョロと事務所を見渡し佐奈の姿を探した。





「佐奈は?まだ来てないの?」


「…さあ、ヒナの部屋にでもいるんじゃねーの。」



「え?何くっついちゃったの?あの二人。」

「…くっついてねーよ!!俺は断じて認めん!!」







ふて腐れされながら少しシュンとする和泉を見て事を理解した琴子は、和泉の気を紛らわせるようにまた和泉の背中に飛びついた。





「私がいるじゃん和泉ちゃん、落ち込まないのっ♪」


「う…うるせえよ!!」





『あ、琴子さん!!来てたんですか?』

「暇だったから出勤前だけど寄っちゃった♪それよりも佐奈〜!!」






自分のもとに駆け寄る佐奈をがしっと捕まえると、琴子はニヤニヤしながらヒナと佐奈を見た。





「も〜メガネ君とくっつけたようで良かったじゃーん、佐奈〜!!」

『え…何で知って…!?』




「しょげてる和泉ちゃん見てたらバレバレよ〜」

「琴子てめえまじ帰れ!!さっさと帰れ!!だいたい何しに来たんだ!!」




「え〜和泉ちゃんに会いに来てあげたんじゃない!!あ、そうだ、和泉ちゃんフランス語教えてよ!バイリンガルなんでしょ?」





「バイリンガル…?」






和泉がキョトンとした顔で琴子を見ると、琴子は持っていたタブレットで南在探偵事務所のホームページを開いた。

そこには確かに"外国人歓迎、英語フランス語の話せるバイリンガル在籍"との記述があった。





「はああああ!?何だよこれ、おっさんの仕業だろ!!俺言うほど喋れねぇぞ!!軍いた時も単語とスラングだらけでマトモな会話なんか…てか俺英語とか喋れねぇし!!」


『英語はもしかして和泉さんじゃなくて…ヒナさんじゃないんですか…?』





「え……俺…?」








思いもよらぬ事態に、ヒナと和泉は事務所の奥で九条とのんびり煙草を吸っていた孝之助に詰め寄った。

鬼気迫る二人の様子に、孝之助はキョトンとしながら首をかしげた。








「これ付け加えたのおっさんだろ!!勘弁してくれよ!!俺フランス語で依頼受けれるほど喋れねぇって!!」


「はあ〜…昨日珍しくホームページの書き換えかたをヒナに聞いていじってると思ったら…こんなこと書いてたんですか…孝之助さん。」



「俺もアメリカ人苦手(ノリが)なんで勘弁してください…。」






ホームページを突きつけそう懇願する二人に孝之助はニコッと笑うやいなや、一転し今度は鬼の形相で言い放った。





「甘い!これからは国際社会、グローバルに事業を展開していかなきゃならんのだ!!!!!!!.だいたい和泉は他のアピールポイント少ないんだからフランス語くらい喋れ!!!!!!!」











「ならおっさんが喋ればいいだろーがー!!!!!!!!!!」

「俺が今から勉強してたら喋れる頃には国際化社会も終わってるわーーー!!」









ー…トントン




『あの……。』





睨み合う二人に割って入るようなノックの音に皆がドアの方に視線を向けると、ドアの隙間から明らかに動揺した佐奈が顔を出した。






『い…依頼人の方がいらっしゃってますが……』

「白人の男の子よ〜。」








「「えっ!!!!!!??????」」





驚く皆が恐る恐る応接室を覗くと、そこにはヒナにも引けをとらない長身の白人男性が立っていた。




「おいおいどうすんだよ。ヒナ行けよ、英語は世界の公用語だろ。」



「……やだ…。」

「いーからウダウダいってねーで二人とも行けっ!!!!!」









ー…バタン…!!!!














「「………どうも。」」








「…Bonjour!!Enchante Je suis ravi de vous rencontrer!!」













爽やかな笑顔とともに繰り出された本場のフランス語にヒナは和泉の肩をポンとたたくと、

和泉は引きつった顔で目の前のフランス人男性に笑顔を作り、逃げようとするヒナをがっちり捕まえたのだった。





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