リバースヒーロー

□01.難有り探偵社
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ー…ペラッ





「え〜と橘佐奈さん、22歳ね。」










『は…はいっ!!』













橘佐奈、22歳。


簡素な事務所の一室で、私は今まさに新社会人としての崖っぷちに立っていた。





バカ正直な性格と近年まれにみる不況が災いしてここまで面接に落ち続けてもう20社。

藁にもすがる思いで、正社員急募の張り紙の貼ってあったこの"南在探偵事務所"の門を叩いたのだ。






「じゃあ…志望動機とか聞いちゃおうかな。」



『はい!!御社を志望したのは…志望したのは……………御社の企業方針に大変……いや…えっと…共感いたしまして、私の理想とする…』


「本当は?」




『はい!!実はもう何社も落ちまして藁にもすがる思いで……ってああああっ!?』





思わず口をついて出た言葉に佐奈は慌てふためき、面接官の男はゲラゲラと笑った。








(終わった…。)







青ざめ俯く佐奈は21社目の不合格を確信し、がっくりと肩を落とした。





「その一生懸命なのに報われない感じとバカ正直なのが不採用の要因かい?」


『はい…恐らく…。』


「こんなべっぴんさんなのに、勿体ないなぁ。」



『…へ?』





驚く佐奈が顔を上げると、男はニッと笑った。





(今まで緊張でよく見てなかったけど、何でこの人着物で髭面なの…?こんな人が採用担当者なんて…なんかちょっと怪しいような…。)





面接官の男は着流しに羽織を羽織り、髪は茶髪でさらには髭まではやしている。

20社あまりの面接を受けてきた佐奈でさえ、一度もお目にかかった事のないタイプだった。






「で、仕事けっこうキツイけど大丈夫?」



『………え!?採用して頂けるんですか!??も…もちろんです!!頑張ります!!』




身を乗り出して言う佐奈に男はフッと笑い、トントンと履歴書を片し始めた。




「正直うちも人手足んなくて困ってたんだよ、頑張ってくれるならこっちも何よりでさ。あ、最後にひとつだけ質問いいかな?」



『あ、はい!!』



佐奈が頷くと、男は今までとは打って変わって真面目な表情で尋ねた。









「君は前科のある人間をどう思う?」





『…え…?』







思いもよらなかった質問に佐奈は少し戸惑いつつも、思った通りを素直に答えた。





『罪の内容によっては…怖くないとは簡単に言いきれませんが、更生して頑張っているなら私は応援したいと思います…!!』




「…。」






佐奈の真剣な表情と言葉を聞いた男は、ニコッと笑って佐奈に手を差し出した。





「合格だ。俺は南在孝之助(ナンザイ コウノスケ)、南在探偵事務所の所長だ。これからよろしくな、佐奈ちゃん!!」





『は…はいっ!!宜しくお願いしますっ!!』

(こ…この人所長だったんだ!?)




「じゃあもうこのまま仕事内容とか説明しちゃってもいいかな?」



『はい!!!!』







佐奈が元気に返事をすると、孝之助は嬉しそうに佐奈に手招きし、応接室を出た。





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