オリキャラの話
□サイドストーリー フユ編
1ページ/2ページ
ナツがポケモンセンターに到着するのとほぼ同時刻、フユはミナモ沖にあるアクア団アジトに戻っていた。
「フユ、只今戻りましたー」
「ご苦労様です、例の書類は首尾よく奪えましたか?」
フユを出迎えたのは女性幹部でありアクア団の作戦隊長を任されるイズミ。
「それが邪魔が入っちゃってこの通り。やっぱりまだ一人で任務こなすなんて無理でした」
フユは両手を開いて何も持ってないことをアピールした。
「まさか、邪魔に入ったというのはマグマ団では」
イズミは最悪の事態を想定した。
「いいえ、一般トレーナーでした」
「そうですか…ならば早急に次の手を考えなければなりませんね」
一安心したイズミはフユの失敗を責めもせず、次の作戦を画策する。
「おぉ、フユ戻ったのか!」
そこに現れたのは全身黒ずくめで胸部を豪快に開いた大柄の男。
「アオギリ様!」
「リーダー!ごめんなさい、任務失敗しちゃいました。折角任せてもらったのに」
「ハッハ、気にすんなって!誰にでも失敗はあるモンだ、初めてならなおさらにな!」
アクア団のリーダー、アオギリは気落ち気味なフユの背中を豪快に叩いた。
「しかしお前、ヌマクローとシザリガ―連れてってただろ?相手は丸腰じゃなかったのか?」
アオギリが素朴な疑問を問いかける。
「それが、なかなか森から出てこないんで探しに行ったら、偶然そこにいた一般トレーナーに助け求められちゃって」
「んで、そいつに負けたって訳か」
フユは頭を掻き、アオギリは腰に手を当てて軽いため息をつく。
「はい、その子面白い子で、すっごい独特な戦い方で、荒々しいのに凄く、綺麗なんです。僕なんかには到底真似出来ないけど、何か見てるだけですごく惹かれて…
それで友達になろうとアクア団に勧誘もしたんですけど断られちゃいました」
「へぇ〜、ずいぶんと気にいったみてぇだな。で、そいつの特徴は?」
フユの嬉々とした話ぶりに、アオギリもその人物に対して興味が湧いてきた。
「髪の毛はピンク色でビンビンに跳ね上がってて、瞳は黒みががった赤、黒縁の眼鏡をかけたポケモン並みの身体能力を持った女の子で、
名前はナツって言うんです」
ほら、とフユはシザリガーをボールから出した。その赤い装甲には、大きなヒビが入っている。
「ポケモン並み…か」
アオギリは装甲をまじまじと見つめ、何か思う所があるのか、顎に手を添え髭をなぞる。
「これをやったのが、その少女だというのですか?」
イズミは驚きの声を上げる。
「まあ、大部分は」
「お前、人の醜態をわざわざ見せびらかすな!」
「いたっ」
フユは怒ったシザリガーにどつかれた。
「ったくこの似非フェミニストが!!あそこで止め差しときゃ良かったのによ、後々面倒なことになっても知らねぇからな!!」
そう言って自らモンスターボールに戻っていった。
「にしても、ナツとフユとは面白ぇ組み合わせだな」
アオギリは腕を組み豪快に笑った。
「でしょう!またいつか、何処かで会えたらいいなぁって思ってるんです!」
そしたら、聞いてみたい事が沢山ある。特に、何で男装なんかしているのか。
「ま、何にせよ無事に帰ってきて良かった、もう疲れただろうから今日は休んでいいぞ」
「はい、そうします」
フユは回復マシンにボールを預け、自室に戻るとそのままベッドに倒れ込み、死んだように眠った。