オリキャラの話

□サイドストーリー キト編
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「あなた達はこれから、トレーナーと呼ばれる人と一緒にこの広い世界を旅することになるでしょう。勿論例外もあるでしょうが、そのどれもが素晴らしい物である事に変わりは無いわ。共に経験を積み、成長してお互いの事を支え合えるよう、願っていますよ」

モンスターボールに入れられる前に、僕らを育ててくれたニンゲンはこう言っていた。
1つ1つ丹念に磨かれたボールに入れられ、僕らはそれぞれ違う場所へと送られていった。

ここに来てから数日が経って、僕はそのトレーナーと思わしきニンゲンを見た。ボール越しに見たその子は10歳位でピンク色の髪と綺麗な紅い瞳をしていた。その子は少し離れた所から真剣な眼差しでこちらを見ていた。何故かは分からないけれど、僕はその時「この子に選ばれたい、一緒に旅をしてみたい」そう強く思った。でも暫くすると、その子は悲しそうな顔をして何処かに行ってしまった。数日後、新人トレーナーとして僕らの目の前に居たのは見た事のない2人のニンゲン。あの子は居なかった。そして僕はこの性格の所為もあって、幸か不幸かその2人には選ばれなかった。
僕は選ばれなかった事よりも、あの子がどうしているのかの方が気になって仕方なかった。

その次の年も、その次も、あの子の姿を見る事も、僕が誰かに選ばれる事もなかった。
そして5年目の今、僕がここに居られるのも今回が最後。最長5年間誰にも選ばれることのなかったポケモンは育てたニンゲン、ブリーダーと呼ばれる人の元へ帰される決まりになっているらしい。でも今年は新人トレーナーとして旅立つニンゲンは3人いるからそれはないと博士という人が言っていた。でも、あの子はきっと今年もいないだろう。きちんと気持ちを入れ替えられるか、僕は少し不安だった。

そして運命の日、奇跡が起こった。

「出てきてくれ、キモリ!」

久しぶりにボールから出た僕が目にしたのは、ピンク色の髪と紅い瞳の眼鏡をかけた15歳位の少年。それは間違いなくあの子だった。

「はじめまして、俺の名前はナツ。今日から新人トレーナーとして旅に出ようと思ってるんだ」

ナツ、それが5年間待ち続けた人の名前。

「率直に言う、お前に俺のパートナーになってもらいたい」

ずっと欲しかった言葉が鼓膜を振るわす。これは…夢?呆けている僕にナツは続けて言った。

「勿論無理にとは言わない、俺はもう15だし、旅には危険と苦労が付き物だ」

無理だなんて、とんでもない!

「時には命にかかわる様なこともあるかもしれない。でも俺はそれを臆することなく受け止めたい、そしてお前と共に
それを乗り越えていきたい」

それだけの覚悟を持って、僕を選んでくれた…。嬉しすぎて涙が出そうだよ。

「お前の事は俺が全力で守る!だからお前の力を俺に貸して欲しい」

答えは考えるまでもなかった。

「ボクも、貴方の為に全力を尽くします」

何とかそれだけ絞り出し、差し出された右手を握った。確かな温もり、これは本当に夢じゃないと、ようやく実感できた。

「よし、約束だ!」

僕に向けられた満面の笑みに、今までの憂いは全て吹き飛んだ。

「これからよろしくな、キト!」
「キト?」
「ああ、それがお前の名前だ!…気に入らないか?」

そんな事はないよ、僕は首を横に振った。

「そうか、良かった!」
「キト…ボクの、ボクだけの名前」

ナツは僕にキトという名前をくれた。たったそれだけの事なのに、僕は飛び上がりたいくらい嬉しかった。きっとナツじゃなかったらこんなに嬉しくはなかったと思う。


これから、僕とナツの冒険の旅が始まる。そこでどんな困難が待っていようとも、僕はナツを全身全霊で支えるよ。
僕がナツの、ベストパートナーになれるように。
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