オリキャラの話

□旅立ち
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まだほんのりと夜の気配を残した午前5時30分。ホウエン地方のアルノタウンという小さな町を走る少年が1人。
彼の名はナツ。黒ぶち眼鏡の奥に見える暗紅色の瞳と後ろで束ねた桃色のはねっ毛が特徴の15歳だ。

「・・・よし、行くか!」

日課の早朝ランニングを終え、近くに置いていた荷物を持って向かった先は彼の家ではなく、近所のポケモン研究所。慣れた様子で鍵を開け、おもむろに足元に散らばった資料を片付けていく。

「ったく、毎日毎日よくこれだけ散らかせるモンだな」

呆れと諦めの入り混じった溜息を1つつきながら、さくさくと作業を進める。かれこれ10分ほどで散乱していた資料の山はきっちり元の場所に収納された。そして部屋中隈なく掃除をすませ、休む間もなくキッチンで2人分の食事を用意する。丁度食事の用意が終わったころに、この研究所の主が姿を見せた。

「あ、おはようございます、博士」
「ふぁ〜、おはよう、ナツ君。今日はいつになく早いね」

頭はボサボサ、シャツには研究の際に飲んでいたであろうコーヒーのしみと大量のシワ。昨晩も研究に夢中で寝るのが遅くなったことが容易に分かる格好で、まだ眠そうな顔をナツに向け椅子に腰掛ける。
博士と呼ばれたこの男の名はヤクモ。人とポケモンのより良い共存関係について研究している。

「あたりまえでしょう!今日は何の日だと思ってるんですか?」
「勿論分かってるよ、今日は年に1度の新トレーナー旅立ちの日、そして」

「ナツ君、君の旅立ちの日だ」
「…5年なんて意外と早かった、ような気がします」

5年前、家庭の事情で旅立ちはおろか、ポケモンを持つことすら断念せざるを得なかったナツは、トレーナーズスクールに通いながらヤクモ博士の手伝いをするという道を選んだ。
この世界では10歳になれば法律上大人と同じ扱いをされる。その気さえあれば、家のことなどお構いなしに旅立つことも出来た。だがナツはそうしなかった。幼いころからトレーナーに憧れ、世界各地を旅して廻ることを夢見ていたが、たった一人、傷心の肉親を置いていくなど、到底できなかった。

「ま、この5年間で学んだことをどれだけ実践で生かす事が出来るかは分かりませんけどね」

そう言って椅子に座り、トーストをかじる。

「君なら絶対に大丈夫だよ、知識も損所そこらのトレーナーより豊富だし、扱いも手慣れてる、そして何よりポケモンのことが大好きだからね」
「…そんなことよ
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