オリキャラの話

□遭遇〜アクア団編〜
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「ありがとう、君のおかげで大事な書類を奪われずに済んだよ!そうだ、何かお礼を…」
「いいですよ、当たり前の事をしたまでですし、それより早く森を抜けた方がいいと思いますよ、コイツが仲間を呼ばないとも限らないし」

そう言ってナツは少年を睨み付ける。

「やだなぁ、人聞きの悪い」

少年はへらへらと笑っている。それが逆に不気味でしょうがない。

「本当に助かったよ、カナズミに来たら必ずデボンによってくれ、必ずだよ!」

男性は手を振ってカナズミの方へ走って行った。

「はい、必ず!」

どうせその為にカナズミに向ってたんだし、と思いながら笑顔で手を振り返す。

「君、ナツっていうんだね」
「お前まだいたのかよ?!」

普通なら隙を見て逃げ出そうという所だが、少年の興味は完全にナツへと移っていた。

「だったら何だよ、お前には関係ないだろ」
「そうでもないと思うよ、ボクの名前はフユっていうんだ、ちょっと運命的じゃない?」

ナツとフユ。あまりにも出来すぎた組み合わせだ。だがナツはそんな事に興味はない。むしろ早く目の前から消えて欲しい。

「カケラも感じねぇよ、んなモン!」

ナツは心底うざったそうに返した。だがそれを気にするでもなく、フユはナツに話しかける。

「ねぇ、君仲間にならない?」
「はぁ?!」

いきなりの勧誘に困惑を隠せない。何言ってんだコイツ…、とナツは眉間にしわを寄せた。

「ウチって年上しか居なくて肩身狭いんだ、それに君とならいい友達になれると思うし」
「友達ィ?!」

ほんのさっき任務を邪魔されたというのに、いやに友好的なフユに、ナツは警戒心を一層強くする。

「お前、自分が何言ってんのか分かってんのか、っつか人の話聞いてないだろ!」
「僕の所属するアクア団って組織は、全ての命が生まれた海を愛し、その海を広げて世界を平和にしようと活動してるんだ」
「テメェ、見事に無視しやがったな…!!」

2人の会話は一向にかみ合わない。ナツのイライラは募る一方だった。

「君程の実力があれば、いずれは幹部も夢じゃないと思うよ」
「目的の為なら手段は選ばない様な集団に入れってか…それがどれだけ矛盾た事か、お前分かってんのかよ?」
「多少の犠牲を払ってでも、成し得たい事なんだ、それに人は皆多かれ少なかれ矛盾を抱いているものさ」

いちいちムカつく奴だと思いながらも、その真剣な眼差しにフユの覚悟を感じる。

「もういい、分かった!それがお前の信念だって事にどうこう干渉する気はねぇ、だが俺はその考えには賛同できない。だから断る!」
「…そっか、残念」

ナツはきっぱりと勧誘を断った。
海を広げる?一体どうやって?どうしてそれで世界が平和になるなどと言う考えにたどり着くのか。ナツには皆目理解出来ない。
だがフユはそれを信じ切って、相当の覚悟を持って行動している。それだけは、その海の様な青い瞳から読み取ることは出来る。

「話は終わったかァ?」
「!!!」

現れたのは、全身を赤い装甲に包まれた、ならずものポケモンのシザリガーだった。

「やっぱりまだ連れてやがったな!!」

ナツは拳を握りしめ、フユを睨み付けた。

「彼は僕の手持ちじゃなくて、先輩のポケモンだから嘘は言ってないよ」

そのしれっとした態度が更に怒りを膨張させる。当のシザリガーは、戦いたくてウズウズしている。この様な場合、選択肢は勧誘に乗って
戦闘を避けるか、全速力で逃げるか、戦うか、だ。ナツの場合、言った事をそう簡単に覆すようなことは無いし、相手に背を抜けるなんてもってのほか、
そして何より売られたケンカは買って、勝つ!というタイプなので必然的に戦いを選ぶ事になる。
相手はシザリガー、レベルは相当上だが、相性、スピード、そして森の中という地の利を生かせばいけるかもしれない。それに

「今の俺達は絶好調だ、この勢いは誰にも止められねぇ!!行くぞ、キト!」
「はい!」

ナツもキトもやる気満々だ。

「タネマシンガン!!」
「クッ!」

効果抜群の技を浴びて、シザリガーは少しよろけた。

「よし、効いてるぞ!」

ナツは確かな手応えを感じた。

「へっ、こんなモン!!」

シザリガーはバブルこうせんを放ち、タネマシンガンもろともキトを吹き飛ばした。

「うわぁ!」
「キト!!」
(チッ、やっぱパワーが違い過ぎるか!)

やはり正面からまともに戦っても勝ち目はない。

「キト、タネマシンガンの射程ギリギリの高さまで木に登るんだ!」
「えっ?」
「早く!!」
「は、はい」

キトは急いでナツの言う通りに木に登った。

「オウヒ、お前も手伝ってくれ!」

ボールからオウヒを出し、同じように木の間に隠れさせる。

「2対1ってルール違反じゃない?」
「何言ってやがる、先に違反したのはそっちだろ!それに、2対1じゃなくて3対1だぜ!!」

そう言うと、ナツ自らも枝に飛び移り木を登り始めた。

「3対1って、まさか君も戦うつもりなの?」
「見てるだけってのはもう飽きた、それに性に合わないんでな!」

人間の都合で戦い、痛い思いをして傷付くのはポケモン達だけ、という現実にナツはかなり前から疑問を抱いていた。
そんな事を言っているうちに、ナツ達の姿は完全に森の中へと消えていた。

「…どうやら逃げる気は無いみたいだけど、これじゃ向こうの動きが全く分からないね」

木々を見上げながらフユが呟く。

「構うもんか、全て撃ち落とせばいいだけだ」

シザリガーは手当たり次第にバブルこうせんを撃ち放った。だが、どれもナツ達に当たる事はなかった。

「チッ」
「やっぱり狙って撃たないと駄目っぽいね」
「うるせぇ、そん位分かっ…」

その時、前方からガサッと物音がした。
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