オリキャラの話

□旅立ち
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「俺、コイツの意思を聞きたいんです」
「ポケモンの、意思を?」

これまで10数人のトレーナーを送り出していったが、こんなことを言ったのはナツが初めてだ。

「これも前から決めてたんです。俺がポケモンを貰える日が来たら、絶対に聞こうって」

ナツは手の中のモンスターボールを真っ直ぐ見つめる。

「ポケモンだって人と同じ生き物だ、それなのにコッチの都合ばっかじゃあ、不公平じゃないですか」

流石に5年の差は大きい。10歳児では、この思想はまず出ない。かく言うナツでさえ、研究所を手伝い始めた頃は思い通りにいかず癇癪を起したこともあった。ヤクモ博士は改めてナツの成長を実感した。

「わかった、君の思う通りにしていいよ」
「ありがとうございます!それじゃ、…出てきてくれ、キモリ!」

ナツはモンスターボールを宙へ投げた。空中で開いたボールから、赤い閃光とともに現れたのは、赤い大きなベレー帽を被り、黄緑を基調とした民族風の衣装を纏った12,3歳程の少年。

「はじめまして、俺の名前はナツ。今日から新人トレーナーとして旅に出ようと思ってるんだ」

自己紹介をされたキモリは大きな丸い瞳でこちらを見ている。

「率直に言う、お前に俺のパートナーになってもらいたい」

イマイチ状況を理解出来ていないキモリにナツは続けた。

「勿論無理にとは言わない、俺はもう15だし、旅には危険と苦労が付き物だ」

初心者用ポケモンは専属のブリーダーによって繁殖、規定のレベルまで育てられ、各地の研究所等に送られる。その過程で、共に旅立つのは10歳前後の少年少女で、世界には見たことのない素晴らしい物が沢山あると教えられる。
それが、ポケモン達に余計な不安を抱かせないようにする為だと、ナツは知っている。

「時には命にかかわる様なこともあるかもしれない。でも俺はそれを臆することなく受け止めたい、そしてお前と共にそれを乗り越えていきたい」

ナツは己の覚悟と気持ちの全てをキモリにぶつける。

「お前の事は俺が全力で守る!だからお前の力を俺に貸して欲しい」

ナツはそう言って右手を差し出した。もしコイツが臆してこの手を拒むのであれば、自分の見る目がなかった。ただそれだけ、キモリを責めるなど、お門違い以外の何物でもない。
キモリは予想外の言葉の数々に少し驚いた様子だったが、すぐに控えめな笑顔と共に、差し出された右手を左手で握った。

「ボクも、貴方の為に全力を尽くします」
「よし、約束だ!」

今日一番の笑顔で握られた手に力を込めた。
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