「…だっ??」


ゆらゆらと揺れる、
長く伸ばされた後ろ髪の持ち主のその肩を
ぽんぽんと叩くと、
彼は、驚いた表情を浮かべて
こちらを振り返った。


「…不覚にも。君の気配に気づかなかったのだ…」


何処か罰が悪そうに苦笑いする彼――
“井宿”。
だが、そんな様子も束の間に、
不意に姿勢を正した井宿が、
何かを差し出してくる。


「旅の途中で見つけたものなのだ。君にあげるのだ」




掌の上にころんと転がるガラス玉のようなそれは。
まるで、春の陽を閉じ込めたかの如く、
淡い桃色の光を宿していた。



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Thank you
for the 10th anniversary
〜2024.April〜
-From chichiri to you-
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