short

□カルピスソーダに恋をして
1ページ/1ページ









焼け付くような日差しの強さに足元がふらつく。
目にかかるまでに伸びた前髪が鬱陶しいとさえ思った。

暑い、とにかく暑い。

教室内にクーラーなんて御大層な物はないし、
ましてや扇風機さえもない。
公立高校だから仕方がないんだけどね。
せめて扇風機くらいいいじゃない。

あたしはこんな暑い中で勉強なんて出来る気がしなかった。
だから今こうして屋上の給水塔の影でサボってるわけです。





「あっ…つぅ…」





手のひらで扇いでも来る風はどこか生温い。

暑い、暑い、暑い!!





「だぁあああ!!暑いんだよぉおお!!!」





叫んでも誰かが言葉を返してくれるわけじゃない。





“そんな風に言うから余計に暑くなるんだよ、ばか”





つまんない、な…





一哉ぁ…つまんないよ。





なんで今日休みなのよぉ。





“…カルピスソーダ奢ってあげる。だから教室帰ろ?”





“え〜…またカルピスソーダぁ?”





“文句言わないの。琴羽もカルピスソーダ嫌いじゃないんでしょ?”





嫌いじゃない。





君が好きな飲み物だから。





“嫌いじゃ、ないよ”





嫌いじゃない。





好きなのはむしろ君。










「…は?…こと…は?」





掠れた声がする。
一哉の声変わりして低くなった声が。
嘘だよ、一哉今日熱だもん。
来てるわけないんだから。





じゃあ目の前に居るのは幻覚?





それとも…





「俺だよ、琴羽。夢じゃない、俺」





むにゅっ、いきなり頬をつねられた。



痛い。普通に痛い。





「いひゃいよ」





「だろうね」





「かず…や?」





「うん?」





「熱は?大丈夫なの?」





「下がってきたから来ちゃった」





ひんやりとした一哉の手があたしの手に触れた。
つめたい、きもちいい。





「それにね、」





一哉は給水塔の影から立ち上がると日向の方へ歩いていった。
あたしも慌てて立ち上がって一哉の後に続く。





「それにね、の後は?」





「…やっぱ言わない」





あたしがえーって顔をしたら一哉は苦笑いしてあたしの頭を撫でた。





「…琴羽に会いたかったから」





その声はあたしの耳に届く事なく風に飲まれていった。










カルピスソーダに恋をして



(2人が両想いになるのはまた別のお話)






−−−−−−
あとがき


なんとも煮えきらないのは私だけでしょうか。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ