パロディネタ小ホール

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 全ての海が元素の砂で覆われた世界に“獣人”と“人間”が暮らしていた。
この二つの種族は共存する事はなく、能力の高い獣人が能力の低い人間を虐げていた。
獣人とは、外見が動物のような人間の事を言う。
彼らは、四足歩行ではなく、人間と同じ二足歩行のような姿で生活しているか、”獣化“と言って獣そのものの姿にも変えられる事が出来た。
この種族としての差は社会格差として反映され、人間は常に優秀な獣人の下位に位置付けられ、虐げていた。
彼らが暮らす世界は、大まかに四大陸と呼ばれる四つの大きな大陸に分かれていた。
その中の一つ、春の大陸スフィールと呼ばれている大陸は温暖な気候に恵まれ、一年中草花が咲き乱れている土地。
スフィールは温暖な気候の他、海が砂しかないこの世界には珍しく、水の豊富な大陸でも有名である。
それはスフィールで大きな港町である蒼の都ヴィトーに世界の源とされる四聖獣の一体、蒼水王が住んでいる蒼の塔があり、塔から絶えず送られてくる水の恩恵を受け、ヴィトーは今日まで発展していったのだ。
ヴィトーに建てられている建築物や道に引かれたタイルや石、街頭等の装飾が蒼や水色といった青系統で統一され、都の至る所には水路が張り巡らせてたり、水上公園があったりと水の都に相応しい造りになっていた。
普段は活気に溢れ賑やかな都だが、今日はいつになく緊張した雰囲気が漂っていた。
「たった今、世界撲滅委員会を名乗るテロリストより犯行声明文が送りつけられた!!」
港を見渡せる階段の一番上で一人の青年が犯行声明文とおぼしき紙を持って、部下と思われる何十人もの武装をした獣人達に向かって今回の任務内容について話し始めた。
「連中の目的は、この蒼の都ヴィトーを撲滅する、という内容だ!俺達救済委員会は何としてでも都の撲滅を阻止する!」
目立つ逆さ立ちの銀髪、左目を紫色の布地のような眼帯に覆われていた。
彼の名は長曾我部元親と言い、鬼族と呼ばれる獣人の長“鬼師”であり、獣貴十二師の一人である。
獣貴十二師とは、獣人の一族それぞれの長の事を"獣貴"と呼び、種族の後ろに「師」がつく事から彼らを纏めて呼ぶときに用いられる事が多い。
「んな隅に居ねぇでコッチに来いよ!」
元親は階段下の隅の方で話を聞いていた一人の青年を手招きしながら呼びかけた。
「今回の警備兵の配置についてのおめえさんの意見が聞きたい」
元親は配下の部下達を配置に付かせたあと、階段下の隅の方で静かに話を聞いていた一人の青年を手招きしながら呼びかけた。
「知らん!自分で考えろ!」
フン、と鼻をならし青年はそっぽを向いた。
青年の名は石田三成と言い、元親と同じ銀髪に琥珀色の切れ長の瞳、肌の色は色白を通り越してやや青白く、近くにいる元親と比べると細身で猫背気味だった。
体格が良い鬼一族からすると細身の三成は変に目立っていた。
それもそのはず、三成は”鬼族“の者ではなく、“狼族”の者だからだ。
それもただの狼族の獣人では無く、彼の父親は獣貴十二師が一人”狼師“の地位にまで上り詰めた人物だったからだ。
では元狼師の父親を持つ三成が何故、他種族である鬼族の所にいるのか?それは、三成の母親が獣人ではなく“人間”だった事が原因だった。
三成は元獣貴と人間との間に生まれたハーフの”半獣人“の為、獣人から母親が人間との理由で疎(うと)まれ、人間からも獣人の子との理由から迫害を受けるのだった。
父親亡き後は、母親と共に各地を転々とした日々を送っていた。
しかし、その母親も今までの苦労がたたり、病に倒れそのまま帰らぬ人となってしまった。
母親亡き後、天涯孤独となった三成は偶然、父親の古い知り合いである獣貴十二師の一人、猫師こと竹中半兵衛と出会うのだった。
半兵衛の計らいでなんとか狼族に身を置くことが出来たが、やはり半分人間の血が流れていると言う理由で仲間内からも良く思われずに孤立していた。
そんな三成の事を不憫だと同情した元親が現狼師との話し合いの末に引き抜く事に成功し、今に至る。
「アンタらしいな」
三成の返答をある程度予想していた元親は気にする様子で苦笑いした。
「考えずともいつも通りにすれば良いだろ?」
別に今日が初任務でも重要な警備でも無いのだから、そこまで確認をする必要は無いだろ?といつも以上に入念な元親に三成は疑問に感じた。
「いつも通りとはいかねぇんだ。なんたって今回の相手は、あの“世界撲滅委員会”だ。正直どう来るかが予想出来ねぇ…」
今回の相手は、世界救済委員会が創設されるキッカケとなったテロ組織世界撲滅委員会≠セからだ。
世界撲滅委員会とは世界各地で破壊行為を繰り返す、文字通り世界を撲滅する活動を行う組織の事。
何故、世界を撲滅しようとするのか?その目的は謎に包まれており、いまだに明かされてない。そして何故かメンバーへの活動内容の通達は、上空よりばら蒔かれる大量のビラのみと言う変わった組織でもある。
それに対抗し、テロ行為及び世界の撲滅活動を阻止する為に獣人達の長である獣貴十二師達により創設されたのが”世界救済委員会“と呼ばれる組織である。
獣貴十二師の一人である元親や彼の元に身を置いている三成も救済委員会に所属している。
しかし全員が同じ目的ではなく、別の目的の為に救済委員会を利用している獣貴もいるので、元親のように純粋に世界の為に活動をしている者がどのくらいいるのかは不明である。
世界救済委員会は世界撲滅委員会の他に打倒獣貴、人間解放を掲(かか)げるゲリラ組織“黄金の獅子(おうごんのしし)”とも敵対関係にあった。
黄金の獅子は反獣人・獣貴を掲げているだけあり、メンバーはほぼ人間のみで構成されている。
同じく反獣貴も掲げる世界撲滅委員会については世界救済委員会並びに獣貴達の注意を引き付けているお陰で自分達の活動がしやすいと捉えているが、世界を破壊しようとする彼らの考えには賛同せずに反対の立場を取っている。
この二組織の他にも獣人達に反乱を企てる小さな組織もあるので、各領地を納める獣貴達は世界救済委員会の他にも独自の警備兵を配置しているのだが。
「警備にブタ師の配下の者がいないのは何故だ?」
ヴィトーを治めているのはブタ一族の長、ブタ師であるから当然警備に就いていると思われたが、見渡す限りブタ師配下のブタ族の姿は一人も見当たらず、警備についているのは元親の配下の鬼族だけだった。
「ブタ師の野郎なら自分の身を護るんで精一杯。んで街まで警備が回せなくなっちまったんで、その警備の埋め合わせに俺達救済委員会に要請が入った訳よ!」
「くだらん!何故怯えるのか理解出来ぬ」
街の警備をする為の警備兵を自分の身だけを守る為だけに使うブタ師の考えが三成には、理解できずにいた。
「ビビっちまうのも無理はねぇだろ。…なんたって既に一人やられちまったんだしよ」
三成を宥めながら元親は、橋の下を流れる水路の水に視線を落とした。
今から数週間前に同じ獣貴十二師の一人が世界撲滅委員会の者に討ち取られると言う衝撃的な事件が起こったばかりだったからだ。
「そんな事より何故一カ所だけ警備兵を配置しなかった!!」
「その事だが、その箇所には自分とこの警備兵を置くんで邪魔になるから置くな!!…って怒鳴るようにブタ師の野郎が言ってきてな」
元親が言い終わらないうちに地響きのような大規模な爆発音と共に地面が立ってられないほど大きく揺れた。
「この音と揺れ…爆弾か!?」
既に世界撲滅委員会は、厳戒警備の穴をすり抜け都内に侵入し、破壊活動を始めたのか?それしか元親には考えられなかった。
「大変ですぜアニキ!街の中心部から火の手が!」
「んだと!?」
中心部には上級居住区と呼ばれる場所があり、獣人でも通行許可証を持つ高貴な獣人のみが出入が許されている特別な居住区の事である。
そこには、蒼の都ヴィトーを納める領主のブタ師が住む館と街の水源地である蒼の塔がある都内でも重要箇所でもあった。
その場所は、ブタ師配下の警備兵が厳重に警備に当たり、警備兵達の動きの邪魔になるからとの理由で救済委員会の警備兵が唯一配置出来なかった箇所でもあった。
「くそっ!!やっぱ無理でも配置すりゃあ…って待て、三成!!」
元親の話を最後まで聞かずに三成は、爆発のあったと思われる中心部にある上級居住区に向かって駆けて行った。
火の手の上がったと思われる上級居住区は商業地区を抜けた一番奥にあるエレベーターを上がった先にある石畳の階段を駆け上がり、道を右に曲がったその先に上級居住区への入口がある。
向かう途中、避難するために下に降りるエレベーターに向かって行くヴィトーの住民達とすれ違ったが、三成は気にせずに爆発のあった中心部を目指していった。
三成が上級居住区の門前に着いた時には誰も居らず、辺りに立ち込める硝煙の匂いだけだった 。
爆発のあったと思われる上級居住区に入る為の門は開かれる事無く、固く閉ざされ爆弾による損傷は何処にも見られなかった。
「誰もいないだと?硝煙のせいで匂いが分からん!!」
鼻が利く種族の三成だったが、爆発の際に残った硝煙の匂いが強く、匂いの判別がつかなかった。
「その様子だと逃げられたようだな?」
三成から遅れて部下を引き連れた元親も上級居住区の門の前に到着した。
「だが、まだ遠くには行っていないハズだ」
門が破られてない事から上級居住区には侵入したとは考えられなかった。
思いの外、門が頑丈な造りと判断し上級居住区への侵入を諦め別の所に移ったか、もしくは。
「某は逃げも隠れも致さぬ!」
「貴様は…!?」
三成が見上げたその視線の先に、一人の青年が門の上に立っていた。
「この腐りきった世界を最後の一片まで完全に滅する…それが某達、世界撲滅委員会!」
世界撲滅委員会を名乗った青年は焦げ茶色の長い髪を一つに纏め、額には鉢巻きのように赤い細長い布地を巻き付けていた。
服装は遠くからも見ても良く分かる赤装束にその背には、愛用と思われる二槍を背負っていた。
「来やがったな世界撲滅委員会”紅蓮の幸村“!」
「如何にも!某は真田源二郎幸村!我が紅蓮の炎魂(ほのだま)受けてみよ!」
そう言うと幸村は、両手に持った小型爆弾を元親達がいる地上目掛けて投げ落とした。
小型爆弾の爆発によって生じた爆風を元親、三成の二名は何とか防いだが、一緒にいた元親の部下二名が吹き飛ばされ後ろにあったフェンスに勢い良くぶつかりそのまま気を失った。
「もう終わりでござるか?これでは鍛錬の相手にもなりませぬ。一から鍛錬をし直す事をお勧め致す」
先程までいた門の上から飛び降りた幸村が、地面で伸びている元親の部下二名を見て物足りなさそうに呟くように言った。
「たいそうな贈り物じゃねぇか!さっき起こった爆発は、アンタの仕業と見て間違いないようだな?」
「逆さ立ちの銀髪に左目の眼帯…!そこにおられるのは獣貴十二師が一人、鬼一族が長の長曾我部元親殿とお見受け致す!」
「だったらどうする?”獣貴殺しさん"よ!」
相手を挑発しつつ、愛用の碇槍を構え幸村の出方をうかがうように体勢を取った。
今、目の前にいる幸村は数週間前に獣貴十二師の一人を討ち取った張本人だからだ。
「腐った獣人、獣貴は全て撲滅するが某に課せられた使命。…お命頂戴つかまつる!」
幸村は背負っていた二槍を素早く取り出し、構えると同時に元親目掛けて駆け出した。
「させるか!」
元親が動く前に彼の斜め後ろの方にいたはずの三成が、いつの間にか鞘から刀を抜き、勢いよく突っ込んで来た幸村の二槍を弾き返した。
「貴殿は何者だ?」
思わぬ乱入者により弾き返された幸村は、後ろに数歩下がった。
「貴様に名乗る名などない!!」
三成は刀を構え直しながら幸村を睨みつけた。
「…貴殿は相当の手練れとお見受け致した!この幸村、全力でお相手いたす!!」
体勢を整え、幸村が駆け出そうとしたその時、またしても突如として妨害が入るのだった。
妨害とは上空から大量のビラが降ってきたからだ。
「こんな時に何事でござ……何と!!誠か!!」
上空からばら蒔かれたビラのせいで戦闘を中断された事に不満を口にしつつも、落ちてきた一枚ビラを空中で掴み、不機嫌そうに幸村は視線を落とした。ビラに書かれた内容を読んでいくうちに幸村の表情が険しい表情から笑顔に変わっていった。
「この時を待っておりました!!漸(ようや)く…漸く動き出すのですな!!」
読み終えるなり幸村は、嬉しそうに読んでいたビラを握り締めた。
「何が動き出したと言うのだ?これは?」
コロコロと変わる幸村の表情に訳が分からない、と呟いた三成は近くに落ちていたビラを一枚手に取った。
「お二方、某は急用が出来たのでこれにて失礼致す!」
そう言うと幸村は、懐から何かを取り出し地面に向かって投げつけた。
幸村が投げた小さな何かは、地面に叩き付けられたとたんに爆発し、それと同時に辺り一帯に煙が立ち込めた。
「煙幕か!!?」
煙のせいで視界を見失い、風で煙が薄くなってきた時には幸村の姿は、何処にも見当たらなかった。
「まだ遠くには行っていないハズ!」
「待て、三成」
刀を鞘にしまい、逃げ出した幸村を追跡しようとした三成を元親が引き止めた。
「何故止める?」
追跡しようとしたところを止められ、
元親を睨んだ。
「先ずは被害箇所と被害状況の確認、それから負傷者を運ばなきゃならねぇ。そんでもってそれらの報告書をまとめ上げ、領地のブタ師に提出しなきゃならねぇ…さっきの襲撃でコッチとて人手不足だ」
「それで私に手伝えと?」
「報告書を纏めたりする事務処理が得意だろ?そいつが終われば、追いかけるなり好きにすりゃあいいさ」
正直鬼族は、頭で何かを考えるより行動に移すのが得意であって報告書を書くといった事務系作業が大の苦手だった。
なので今、三成に抜けられると非常に困るのだ。
「それはそうと、このビラの人物はどうするつもりだ!」
幸村との決闘寸前に上空からバラまかれたビラの一枚を元親に突き付けた。
「その事なら心配はねぇ。この村の近くには領主の熊師がいる。そこに使者を送ってソイツを確保するように話をつければ良い」
この春の大陸スフィールには蒼の都ヴィトーを治めるブタ師の他、世界最大の庭園、百花庭園(ひゃっかていえん)を管理するカエル師、そして先程名前の出た熊師が辺境の村バルニを含めた周辺を納めている。
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