title◇tennis

□先生の目の前で
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『あ〜く〜つ〜』

「……」

『あくつじーん』

「………」

『あっくーん…「んだよ、テメェ!」あ、あっくん』

あたしが後ろの席から名前を連呼してると、
亜久津は何回か呼んだら
キレながら後ろを向いた。
あたしはへらへら笑いながら
亜久津の腕を掴んだ。


『亜久津、こんなに腕の筋肉すごいのに、何もスポーツしてないとか勿体無いね』

「離せ、テメェ…」

『嫌だー離さないー』

あたしがそう言って離さないままでいると、
亜久津は大きな音で舌打ちをして
前に向き直った。
あたしはそれと同時に、
腕を離して背中のシャツを掴んだ。


あんまり来ない亜久津が来てるんだから
構いたいに決まってるのに。
好きだから、構いたいのに。
気付かないの、バカ。


すると、亜久津は後ろを振り向かずに
手だけであたしの手を振り払おうとしてきた。


『掴むぐらいいーじゃ…っ、』

「離せ」

すると、亜久津は振り返って
容赦なくあたしの頭を鷲掴みにした。


『い、痛い…は、離してください…』

「離せ」

『は…離しますから…ごめんなさい…』

あたしがそう言うと
亜久津はその手を離した。
あたしも亜久津の背中から手を離して
ひどく頭痛がする自分の頭を撫でた。


『痛いなぁ…』

「うるせー」

『亜久津ー』

「黙れ」

『嫌だって…っ、』

あたしは亜久津の言葉を無視して
そう言い続けると、
亜久津はいきなりあたしの方を振り返って
あたしの顎に手を当てると、
そのまま唇を付けた。


『っ…あ、くつ…』

「…やっと黙りやがった」


「えーっと…亜久津くん…ここは教室なんですが…」


『…先生、』

そこには気まずそうな先生がいて、
先生がそう言うと亜久津は
睨みながら「あ?」と言った。

いや、どう考えても亜久津が
悪いでしょ…

と思ったけど、黙ったままでいたら、
先生は怯えながら謝って
静かに授業を続けた。


『…恐るべしあっくん』

「………」

『…あっくん?』

あたしの言葉に、普通なら
ガンを飛ばして睨んでくるはずなのに、
あっくんは黙ったままだった。

何だかさっきのことを思い出すと
顔が火照ってくのがわかった。
きっと、あっくんのことだから
意味のないことはしないんだと思う。
タイミングがどうであれ、
愛情表現には変わりないと思う。
不器用な亜久津の告白だと思えば
嬉しすぎてニヤけた。



(…テメェ、何ニヤけてんだ)
(え、さっきの愛情表現でしょ?)
(何言ってんだよ…)(あっくん、好き!)
(っ…覚えてろ、)(亜久津に勝った!)




end◇◇
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