title◇tennis

□授業中に屋上で
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『ふぅ…暑い…』

暦の上ではまだ春なのに、
もう気温は夏顔負けな今日この頃。

あたしは授業を抜け出して、
一人で屋上にやって来た。


こんな時間に屋上へ来たあたしはバカだ、
太陽が照り付けて暑すぎる。

あたしは陰を求めてふらふらと歩いた。
すると、こんな真昼間なのに
上手に陰ができているとこを見つけた。
あたしは迷わず歩いて行くと、
そこには、壁に背中を張り付かせて
しゃがんでる仁王がいた。


『…仁王、』

そんな仁王を見下ろすと、
手におもちゃのピストルを持って
器用に回してた。


「お前さん、何しとるんじゃ」

『仁王こそ…そんなおもちゃ持って何してるの』

あたしは一先ずそう言って
仁王の隣に腰を下ろした。


『あたしは涼しみに来…「コレはおもちゃなんかじゃないぜよ」…え?』

あたしが[何をしてる]という質問に
答えようとしたら、
仁王はあたしの言葉を遮って
訳のわからないことを言ってきた。


『ど…どう見ても、おもちゃなんじゃ…「なら、」っ、』

仁王はそう言うと
ピストルを一回転させて、
それらしい動きをしてから
あたしの額に銃口を当ててきた。

おもちゃのはずなのに、
銃口を額に当てられたあたしは
ドキドキが止まらなかった。


「おもちゃと言い切れるんか?」

『い…言い切れ、る』

あたしがそう言うと
仁王は口角を上げて「ほう」と言った。


「撃つぜよ」

『っ…、』

仁王は嬉しそうにそう言って
引き金に手を掛けた。
あたしはぎゅっと目を閉じて
その時を待ってたら―――


…ふわっと風が吹いて、
銃口じゃない何かが
あたしの額に当たった。
閉じてた目を開けると、
そこに仁王の顔は見えなくて。

数秒したら、仁王はあたしの額から離れた。


『な、何…?』

あたしが目を見開いてそう言うと
仁王はふっと笑って
あたしの頭に軽く触れた。


「素直すぎるぜよ」

そう言って立ち上がると
何もなかったようにピストルを持ち、
それをポケットに突っ込んで
屋上を後にした。


その時、さっきとは違う感情の
ドキドキが止まらなかった。




end◇◇
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