title◇tennis

□真っ直ぐな瞳が、
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君はいつでも真っ直ぐ物事を見てて、
周りに厳しく、何より自分に一番厳しかった。
筋が通ってる真っ直ぐな君が好きだった。



…ある日の放課後


あたしは手塚くんに想いを告げるために
テニス部に足を運んだ。

高嶺の花の手塚くんに告白するなんて
自惚れてると思われるかもしれない。
けど、あたしはそうじゃなくて
ただ、自分の気持ちを知ってほしかった。

真っ直ぐな手塚くんにこそ、
あたしの真っ直ぐな気持ちを
知ってほしかった。


人に自分の気持ちを伝えるのは初めてで、
異様な程に汗が出た。
身だしなみを整えて、テニスコートに向かった。



『ふぅー…』

テニスコートが見えてくると同時に
あたしは大きく息を吐いた。
そして、フェンス越しにテニス部を覗いた。
すると、練習中だったのにも関わらず、
ある男の子が小走りで駆け寄ってきた。


「あのー…誰かに用っすか?」

『え…?』

男の子の言葉に驚いた。
用があるってわかってたみたいだから。


「いや、超緊張した顔してっから、不二先輩に告白…「桃城、」っひ!部長!」

『っ…、』

「練習中に何をしている…グランド10周して来い」

「す、すみませんっしたー!」

桃城くんはそう言うと
走ってこの場を後にした。


『え、えっ…?』

「お前は…」

『っ、』

あたしは一人になって慌ててると
手塚くんに声を掛けられた。
手塚くんの反応を見る限り、
あたしのことは知ってくれてそうだった。


「…誰かに用があるのか」

『あ…えっと、手塚くんに…』

あたしがそう言うと
手塚くんは無言であたしをじっと見てきた。

早く言わなきゃ……


『迷惑だと思うんだけど……あたし、手塚くんのことが…「悪いが、断る」っ…』


わかってた、こう言われることは。
でも、やっぱり胸が苦しくて……


『だ、よね…わざわざ聞いてくれて…あ、ありがと…っ』

あたしはそう言って深く頭を下げた。
そして、頭を上げると
手塚くんは真っ直ぐあたしを見た。


「俺だけ浮かれていてはいけない。今は部が第一だ」

『…うん』

「応えられず、すまない」

『…!全然っ、その…ありがと、ございました』

あたしは目に溜まった涙を見られまいと
また頭を下げた。
すると、手塚くんはゆっくりと
あたしの前から去って行った。

ゆっくり頭を上げる。
そこには、テニスに励んでる、
頑張ってる手塚くんの姿があった。


言ったことは曲げなくて、
責任感が強くて、優しくて、
仲間のことを第一に考えてて…

そんな手塚くんが、全部、全部、好きだった。


そう思ったと同時に、一筋の涙がこぼれた。


最後まで真っ直ぐな瞳が、好きだった。




end◇◇
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