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□不意の笑顔が、
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ある日、僕は君を廊下で見掛けた。
ただ、一瞬見ただけの顔だった。
でも、今でも忘れられない……
あの時に見た、君の笑顔を。



君を見掛けたのは夏だった。
僕は移動教室でロッカーに物を
取りに行ってる英二を待ってた。


「にゃ!見つからなーい!不二、待ってろよー!」

「うん、ギリギリまでなら待つよ」

僕はそう言って廊下に出た。
他のクラスも移動教室なのか、
やけにみんながバタバタしていた。

廊下を走る人たちを眺めるように
僕は廊下を見渡してた。


その時、不意に見た人の笑顔が目に留まった。
教科書を抱えて友達と笑顔で話してた。
何を話してるかわからなかったけど、
君は友達に軽く小突かれてて、
へらっと笑って小走りをした。


僕はそんな彼女を見えなくなるまで
目で追い掛けた。
不意の笑顔が、心に焼き付いた。


「……不二っ!」

「っ…あぁ英二、どうしたの?」

「どーしたのじゃないってー!俺、だいぶ前から教科書見つかってたんだけど!?」

「あ…そうなんだ。じゃあ早く行こう」

「おう…って、不二がぼーっとしてたんだからな〜」

「ごめんごめん、暑さのせいかな」

「マジでー大丈夫かにゃ〜?」


…なんて言ってたけど、そんなんじゃない。
本当は君の笑顔だけが頭にあった。

あの不意の笑顔が、好きだった。




end◇◇
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