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□ありがとうとアイラブユー
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外は綺麗に晴れていて、まだ少し肌寒い今日は、中学の卒業式。
式はもう終わって、生徒達は外で親や友人達と記念写真を撮っていた。
それがまた卒業生に名残惜しさを感じさせる。
その光景を屋上から見ているのが俺と丸井。
しばらく黙っていた丸井が、一緒に黙っていた俺に話しかけてきた。

「なあー仁王。」

「何。」

「今日で俺らさ、中学卒業なんだよな。まあ、高校行っても中学から一緒の奴ほとんどだけど。」

「そうじゃね。」

「でもさー。なんか、少し名残惜しくね?」

「何でそう思うん。」


「だって皆と一緒に過ごして、皆と一緒に部活頑張ってた中学卒業すんのって、寂しいじゃん。赤也とも離れるし。」

「丸井でもそう言う風に思うことあるじゃね。」

「は、俺だってセンチメンタルになるときだってあるんですー。」

「はいはい。」

俺の返事に適当だなと丸井が笑う。
いつもと何も変わらない、丸井の笑顔。
だけどそれはいつもより少しだけ大人びているような、そんな笑顔に見えた。


「でもさ、仁王が一緒なら高校でもずっと楽しい気がするんだよね。」

「そうなん?」

「うん。仁王と一緒なら、卒業したって寂しくないや。」


良くわかんないけど。と付けたし、丸井が微妙な表情をした。

丸井はどんなつもりで俺に話しているんだろうか。
丸井の中できっと、俺は良い友達でいられているんだと思う。
俺はとっくに、丸井を友達として見れてなんかいないけれど。


「丸井は俺なんかと一緒にいて楽しいん?」

俺が丸井にそう聞くと、丸井は悲しそうな顔をした。俺は丸井を悲しませてしまったと思い、少しだけさっきの発言をしたことを後悔する。

「俺なんかとか、言うな。」
「…すいません。」

「俺は仁王がいいんだよ。」

それだけ言って、丸井はまた笑った。
ああ、これだ。
やっぱり丸井には笑顔が良く似合う。


「俺も、丸井と居ると楽しい。」


そう俺が言った言葉はあまりにも小さくて、今隣に立っている丸井には、きっと届かない。






でかいキャンパスのような空には、まるで水彩画で描いたように、綺麗な水色が広がっていて。


冬とは違う、春の空がとても心地よかった。


その心地よさの半分の理由はきっと、丸井が隣にいるから。


「卒業しても、シクヨロ。」






ありがとうとアイラブユー
(これからも一緒にいてくれませんか。)



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