捧げ物
□せめて今だけでも
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俺が入院してから、1ヶ月がたった。
ガチャッ
「幸村くーん!お見舞いにきたぜ!」
「調子はどうだ。幸村。」
入院してから毎日のように部活の皆がお見舞いに来てくれていた。
「幸村くんいないと部活寂しいから、早く良くなれよ。あ、これお見舞いのケーキね。」
ブン太が、可愛らしくそんなこと言うから。
一瞬、ドキッとしてしまった。
「ブンちゃーん、あんま幸村ばっかにかまわんといてよ。嫉妬するじゃろ。」
「は?何言ってんだよぃ。仁王とはいつだって話せるけど幸村くんとはそうはいかねーだろぃ。」
「えー。だって寂しいんじゃもーん。」
なんて二人が話しているのを見て、少しだけ心が痛くなった。
仁王とブン太は、付き合っている。
とっくに前から、そんなことは知っていたけど。
俺だって、仁王がブン太を好きになる前から、きっと。
ブン太のこと、大好きだった。
部活で話したり、笑いかけてくれるたび、どんどんブン太のことを好きになって。
なのにある日、二人が付き合いだした。
今まで感じたことない嫉妬に襲われたけど、それでも、俺は仁王も大事な仲間だと思っているから。
二人を傷つけるのが怖くて、結局今まで何もすることができなかった。
「んじゃ、またね幸村くん!」
「お大事にしてくださいね。」
「またお見舞い来るっス!」
「でわまたな、幸村。」
皆がそう言って帰ろうとして
「ありがとう。じゃあ皆またね。」
と俺も返事をした。
また明日も来るだろうと、そんなことを思いながら俺は少しだけ眠った。