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□噛みついた
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俺が目を覚ますと、もう外は真っ暗になっていた。
やばい、と俺が飛び起きれば、部屋の隅で誰かが笑う声がした。



「どうした坂田?怖い夢でも見たか?」

「なっ…違います!!」



そこにはさっきまで寝ていたはずの土方先生がいて、土方先生が寝ていたはずのベットには俺が寝ていた。



「あれ?先生俺、なんでソファーの上にいるんですか?」

「何言ってんだよ。自分であがったんだろ?」

「ぅえ!!ほんとですか。」



自分でソファーの上に上がった記憶なんてない。
あまりの恥ずかしさと顔を真っ赤にしてうつむいていると、土方先生にまた笑われた。



先生のこういう時間が好き。
思いを伝えられなくても、こうして先生と笑い合えてたら俺は幸せ。



「先生、今何時ですか?」

「夜の8時だ」

「あぁー8時ですか………って8時!?!?」



俺が驚いた反応をすれば、土方先生は飲んでいたコーヒーをぶっと拭いてまた笑い出した。



「ちょ、せんせ!笑わないでください」

「だって、くく、坂田、可愛い」

「なっ……」



ほら、先生はまた俺を期待させる。
少しは先生も俺のこと好きなんじゃないかって期待してしまう。
でも、それは叶わないことで、寂しくて涙がでそうになった。



「どうした?」

「あ、いや。何でもないです」



そうやって心配してくれる先生が好き。
でも、これは俺が先生の生徒だからしてることであって、俺は先生の特別ではない。
先生に彼女がいるのかも知らない。
怖くて聞けない自分が悔しくて泣きたくなった。



「坂田?」

「はい?」

「もう夜遅いし。家まで送ってってやるよ」

「え、別に良いですよ」

「これも教師の役目だ」



ズキ。



心が痛んだ。
先生はやっぱり先生でしかなくて、これ以上には進めないんだと分かったら、先生の顔が見てられなくなった。



「ほら、もう行くぞ」



もう少しで九時になろうとしている。
さすがにもう、帰らなくちゃいけない。
重い足を動かして先生の後を追いかけるために走っていった。





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