Oh,my girl!BOOK

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「ねぇ、今回の件どう責任取ってくれるの?」

「まぁ、一先ず落ち着こうよ。あ、コーヒーでいいかな?」


右手に光るナイフよりその眼の方が恐いから、なんて思いながら新羅はコーヒーメーカーのスイッチを入れる。


「で?この件って?」


「体が戻ってから、妙に名無しさんに避けられるんだけど。理由を聞いても話してくれないし。シズちゃんもさっぱりみたいだし」


「君が名無しさんちゃんに何か悪戯したんじゃない?それにその責任を僕に求めるのはお門違いというものだよ」


「慰謝料くらいは請求できると思うけどね。本人の意志を無視して、臨床実験の不十分な新薬を投与し、そのために恋人との不和を生じさせた。しかも薬効は本人から自我と言葉を奪い、獣の耳と尾を生やすなんて、人権侵害も甚だしいよね?さらに副作用として薬が効いている間の記憶が欠落するなんて、これを世に公表したから君にお縄が掛かるのは秒読みだよ。まぁ、そんなことはしないし、逆にその新薬を手に入れたいなんて変態どもが殺到して、君が一儲けすることになるだろうしね」


「数少ない友人を無情にも牢屋に投げ込むなんて、そんな考えは持つもんじゃないよ。警察に捕まったらセルティに毎日逢えなくなるじゃないか」

新羅は前にセルティが白バイ隊の恐ろしさを語りながら身震いしていた姿を思い出していた。

あの様子では毎日の面会なんて叶いそうにない。


そんなことを考えながら、臨也に湯気の立つコーヒーを渡し、その向かいの椅子に腰を掛けた。


「まぁ、僕の推測が正しければ、君が気を揉むことはない」


「新羅の無責任な発言には、いつも殺意が沸くよ」


今回のことが相当こたえたのだろう。用心のためか、ご馳走様、と口をつけなかったコーヒーをテーブルに置いて、臨也は椅子から立ち上がりコートを着はじめた。


「もう帰るのかい?」


「あぁ、名無しさんが帰る時間だから。迎えに行かなきゃ」


「過保護だね。あんまりベタベタすると嫌われるよ?」


「新羅に言われたくないね。それに、彼女は池袋の喧嘩人形の妹で新宿の情報屋の恋人だ。いつその身を狙われてもおかしくないからね。用心に越したことはないよ」

恋人というにはまだ早いのではないか、という言葉が出かかったが、新羅はそれをぐっと堪えた。


「彼女に護身術でも教えたら?なんだったらセルティに頼んであげるよ」


「折角だけど遠慮するよ。彼女は自分が誰かに狙われるなんて夢にも思ってないし、それに、それでいいんだよ。彼女の日常を守るナイトがいつも傍にいればそれで済む話だ」


「まさかその騎士が君?」


「シズちゃんだとでも思った?あれはナイトって柄じゃない」


じゃ行くよ、と臨也は足取り軽く新羅のマンションを後にし、新羅はその背中を見送った。


「ナイト、ねぇ」


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