Oh,my girl!BOOK

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「お帰り、シズちゃん」


風呂からあがると、金髪頭のバーテンが俺の家のリビングで大脚広げてくつろいでいた。


「手前にお帰りなんて言われたくねぇ。それより、名無しさんに何もしてねぇだろうな、」

「あぁ、心配ないよ。俺は自分の欲望のままに名無しさんの純潔を汚したりしないさ。名無しさんが俺を好きだって認めるまではね、」

「じゃあ安心だ。そんなことが起きる可能性は0.000000001%もねぇからな」

「いや、もう名無しさんは俺に惚れてるけどそれを認めないだけさ。だから可能性は9割弱くらいじゃないかな。まぁ、つまり時間の問題ってことだよね」

「あぁ?手前のその付け上がった頭床に埋めてやろうか」

「やだなぁ、シズちゃん。俺の家の物は壊さないって昨日約束したじゃないか」



静雄が帰りしだい口喧嘩をはじめる2人を尻目に名無しさんは冷凍庫を開け、臨也の分のアイスを取出し、まだ口論をやめる気配のない、というよりその口論を楽しんでいるような臨也の頬に後ろからアイスをぴとりと押しあてる。


「ん?」

『臨也、アイス食べたいって言ってたから』


つり目を丸くして振り向いた臨也にスプーンを差出し名無しさんはリビングを後にして兄のために作っておいた夜食を温めにキッチンへと向かった。

そんな名無しさんの後ろ姿を両手にアイスとスプーンを持ったまましばらく眺めながら惚けてた臨也が静雄の方に向き直ると、静雄は恨めしそうな目つきで臨也を睨みつけていた。


「手前、やっぱ名無しさんに何かしただろ」

「シズちゃんはとことん俺を信じないね」


半ば呆れたような笑顔で臨也は大袈裟に肩をすくめた。


「だってありゃ、どう見たって様子がおかしいだろ」


そう言って名無しさんの方に目をやる静雄につられて臨也もキッチンに立つ名無しさんに目を向ける。

言われてみればどことなくぎこちなくもない…って、シズちゃんに言われて気付くなんて、なんか屈辱だったり。

普通の人から見ればいつもの無表情な彼女に変わりないのだが、兄の目から見ればその変化は明らかなもののようで、人間観察に長けた臨也でも言われて初めて気付くような様子だった。


…まぁ、さっきの今だし。揺れた心に追い打ちをかけるなら今かな。


ちょうど静雄に夜食を持ってきた名無しさんを自分の寝室にでも呼ぼうかと思っていた臨也に、意外なことに名無しさんの方から手招きをしてきた。

静雄に気付かれないように小さく手招きをすると、名無しさんは臨也に用意された自分の寝室へと消えていった。


臨也は静雄が夕飯とテレビに意識を向けていることを確認してから、そっと気配を消して名無しさんに招かれるままにその後を追った。
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