Oh,my girl!BOOK

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『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、』

「お、名無しさん!」

『お兄ちゃん、』

「何そんな走ってんだ?誰かにつけ回されてんのか?」


息を切らして横道から飛び出してきた名無しさんは取り立て中の静雄に遭遇した。


『あ、違…、』

「もしかして臨也か?あの野郎、ぜってぇ殺す!殺す!殺す!殺す!」


額に青筋を浮かべた静雄は近くにあった標識をギギギッと音を立ててコンクリートから引き抜いた。


『違う!』

「…名無しさん?」


名無しさんは宛てもなく走りだそうとする静雄の背中に抱きついた。


『違う。何でもない。大丈夫』


自分の腰にしがみつく名無しさんに静雄の怒りはすっーと治まった。


「じゃあ、どうしたんだよ?」


手に持った標識を道路に投げて、静雄は名無しさんの肩に手を置き身を屈めて名無しさんの顔を覗き込んだ。


『…猫に、…追い掛けられて…』

「は?猫に?」

『うん』

「はははははっ、」


静雄は名無しさんが小さな猫に追い掛けられて必死に逃げる様を想像して、可愛らしくてつい笑いだしてしまった。


「そりゃ恐かったな」


静雄は名無しさんの肩に乗せていた手を今度はその頭に置き、ポンポンとあやすように撫でた。


『…うん、』

「もうすぐ仕事終わるからちょっと待ってろ」


そう言って静雄は少し先にいたトムの所に走り少し話をしてから戻ってきた。


「帰るぞ、」


そう言って静雄は名無しさんに右手を差し出す。




ズキン…、


名無しさんは兄の優しい笑顔とその右手に胸が痛んだ。


臨也…、
何であんな顔したの…?



名無しさんは今日のことは静雄には黙ってくことにした。



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