今週の蒼樹紅

□パンダ
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蒼樹さん、、。
溜息をつきながら僕はゲームセンターに、逃げ込んでいます。
吉田氏は酷い人だ、、。
今週の蒼樹紅、もたいしたことない情報で、肝心な、お好みのプレゼントが解らない。
「おっ!やった!」
また、クレーンでたれパンダをゲット。デパートの手提げ袋がいっぱいになった。
そろそろ場所を変えないと、悪魔の吉田がやってくる、、
「平丸さん」
えええっ!何故こんな所に蒼樹さん!僕は紙袋を後ろに隠した。
「今日は、初めて、ゲームセンターというものを取材しにきました」
蒼樹さんは、その碧く見えるような透き通る瞳を丸くしながら、物珍しげに、中高生でいっぱいの、ゲームセンターを見渡している。
ああ、蒼樹さん、、僕のティンカーベル、、、貴女が居るなら、こんな喧騒もカオスも美しい妖魔の森になる、、。
「あっ!平丸さん!たれパンダ」
「はっ!(発見されてしまった!)」
蒼樹さんの笑顔が弾ける。
な、なんと美しい!
「私、大好きなんです」
「えええっ!」
蒼樹さんが僕の手元のパンダを見つめている。
「あの、、よろしかったら、さ、差し上げましょうか、、、」
「嬉しいです!」
「どのコにします、、?それとも全て差し上げましょうか、、?」
蒼樹さんが紙袋を覗き込むので、艶のある栗色の髪の、つむじが見えて、なんだか触りたくなってしまいます!つむじの下の肌の真白い事!
ナイスつむじ!
つむじ萌えする僕は変なのでしょうか?
「このコがいいです。いただいてもいいですか?」
流石に、蒼樹さんだ。
大量生産のパンダは同じに見えるけれど、実は皆違うコなんです。そのコは僕が、今日一番の綺麗コちゃん、と、ひそかに思っていたコです。
「かわいい、、、ありがとうございます」
そう幸せそうに笑う蒼樹さん。いつもはどこか陰があって、寂しそうに見える蒼樹さんの、こんな柔らかな微笑みが見られるなんて!
なんて幸せなんだ!
時間よ、、永遠に止まって欲しい、、。
「平丸、、、!」
げげげっっっ!!
悪魔だ!
「平丸さん、、回収ですね、、」
「蒼樹さん、、!ぼ僕のマンションに、コレクションがあるんです!(仕事場さえ見せなければ、蒼樹さんコレクションも見られなくて済む!)」
「ええ!でもお仕事でしょう?」
僕は吉田氏を振り返りながら
「いいですよねえ?少しくらい?僕モチベーションあがりますし」
吉田氏は少し考えて
「そうだなぁ」
と、にたりと笑った。
三人でタクシーに乗り、僕の(悪魔に買わされた)立派なデザイナーズマンションへ!
「凄く素敵なお住まいですね」
と、蒼樹さんが褒めてくださる。ああ、昨日ダスキンにクリーニング頼んどいてよかった!
「あとは嫁さん貰うだけなんですけどねえ、蒼樹先生」
ナイス!ナイス吉田氏!
「本当ですね」
「蒼樹先生は、ご結婚とか考えていないんですか?」
ぐいぐいと吉田氏が押す。ナイスです!
「私など、まだまだ駆け出しですし、、学校も卒業していませんし、、」
「卒業!いい機会じゃないですか!、、何かの機会や、弾みがないと結婚なんてできないものですよ」
ナイス!
「はあ」
「漫画家同士の結婚、というのもありますしね、、お互い刺激を受けていいんじゃないかな」
「はあ」
そんな会話の合間に、僕はティーアドバイザーになれるほど勉強した、紅茶をいれる。
「ささ、どうぞ、蒼樹さん」
「、、、いいかおり、、美味しいです」
満足そうに、溜息をつく蒼樹さん。ああ、この日のために用意しておいたマイセンのカップ、僕はカップになりたい。
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