今週の蒼樹紅

□クリスマス序曲
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木の葉が木枯らしに舞っている。
蒼樹さん、、僕の妖精ティンカーベル。はたまた、樹の精ドリアーデ。
今日も僕は、疲れきった脳髄を絞りきりながら、漫画という魔道非道の仕事をしています。
ああ、蒼樹さんの愛らしい小さな頭に載せるティアラ、こんな感じはどうでしょう?お店は、やはりティファニーか、或はショパール、カルティエか、いや、ダイヤモンドならハリーウィンストンでしょうか、、、
「なんだ平丸、これはデザイン画か?」
吉田氏にササッと描いたティアラの絵を見られてしまった。
「ふーん。中々、デザインも上手いな。やはり天才だ」
て、天才だなんて、、。
吉田氏がにたり、と笑い、
「蒼樹先生に、似合いそうだな」
僕は図星をつかれて、真っ赤になってしまう。
「これは、買ったら何千万もするな、、しかし、妻の知り合いが、宝石の個人オーダーメイドをしている、、」
「は、はいっ?」
「デザインが出来ていたら、市価の半額以下で造って貰えるぞ」
「ほ、本当ですか?」
僕がデザインした、小さな可愛いティアラ。
ああ、蒼樹さんのクリームのような小さな頭に
ちょこん、
と載せたら、どんなに似合う事だろう!
「吉田氏!その話、お願いします。この一番大きなダイヤモンドのクラリティは、、いや、僕が裸石を見ます」
「その前に仕事だ!」
夢のようだ。
ダイヤのティアラ。
まてよ、クリスマスまでには間に合わないのでは、、
そもそもいきなりティアラをあげる、なんて。
それってつまり、プ、プ、プロポーズ?
ああ、蒼樹さん、と結婚!
いや、そんな、とんでもない、恐れ多い、、。
妄想を巡らすだけなら、僕にもできる。
蒼樹さん、、
朝、起きたら、蒼樹さんが、
「一也さん、おはようございます」
と、フリフリの白いエプロン(日替わりでピンクもいいです)で、ニッコリ微笑みかけて
ああ、それだけで一日頑張って漫画も描けるでしょう、、
おお、こうなると自営業の漫画家は好都合だ。
いつもいつも、
吉田氏ではなく
僕の優梨子さんと!
一緒に居られる!
漫画家万歳!
しかも蒼樹さんのスタッフさんは全員若い女性だと言うし、
乙女達を従える女神アルテミスのように
ああ、そうなったらアルカディア、、、
一日が終わったら、あのパンダさんより柔らかな蒼樹さんに抱きしめられて疲れた一日を終える事ができる、、、
「平丸、鼻血が出ているぞ!」
ハッ!いけない。
そんなことよりクリスマスイヴに会えたなら、一体どんな話をしよう。
プ、プレゼントは何にしよう?
それより何より原稿を早く仕上げねば、、、
蒼樹さんの甘い声が聞きたい。
蒼樹さんの美しい顔が見たい。
蒼樹さんの愛らしい姿が見たい。
ああ、蒼樹さん、、、
「吉田氏、蒼樹さんのお好みのプレゼントを聞き出しておいて下さいよ」
「よし。来週の蒼樹紅はそれだな」

パンダさん、今日も辛い一日が、やっと終わった。
冬に向かって一人寝は寒くて、益々孤独だ。
こんな夜、蒼樹さんはどうしているのか。
どんな寝間着を着ておられるのか
パジャマもいいし、
ネ、ネグリジェ、もいいし、
あの、えーと、ベビードール、と言うものも
だ、ダメだ。また、鼻血が、、
想像したら、寝付けなくなってきたぞ、、。
あの男に電話してみるか。
まだ、起きていることだろう。
いつの間にか、僕は福田くんにしょっちゅう電話をするようになっていた。
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