艶やかな秘めごと
□明治剣客…?
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「剣心、薫が風呂沸かしてくれってよ。」
「わかったでござる。」
んー…、あれが幕末最強の維新志士と恐れられた人斬り抜刀斎。
「今日も洗濯日和でござるな!」
主夫だけど。
こないだ左之助に井戸に落っことされてたし。
なんというか…
「さて、風呂を沸かして……優?どうかしたでござるか?」
「…洗濯できて、料理は上手、掃除も完璧、子供もあやせる。」
「??」
「剣心、実は剣客じゃないでしょ。」
「…え?」
「嘗て、人斬り抜刀斎と呼ばれた幕末最強の維新志士…しかしその正体は!!」
「し、正体は?」
「料理洗濯掃除大好き主夫!」
「……拙者主夫ではござらんのだが…」
袂を上げて今から風呂を沸かす奴が言っても全く説得力ないけど、まぁいいや。
「というわけで、今から剣心の行動を調査します!」
「拙者の?」
「そう、主夫かどうか見極めてあげる!」
「あはは……言い出したら聞かないんだから…」
「さ、風呂沸かして!」
「はいはい。」
かくして、剣心主夫捜査が始まった。
明治主夫浪漫譚にすればいいよタイトル。
剣心が主夫する話。
「に、しても剣心て働き者だね。」
「ただ、寝てご飯を食べているだけでござるから、これくらいは朝飯前でござるよ。薫殿や優にばかり頼るわけにはいかないでござる。」
「私も収入は少ないよ?薫ちゃんに比べれば。偶に出稽古についていくけどね。」
薪を組み、火をつけて息を吹きかける。
手慣れたものであっと言う間にお風呂が沸いてしまった。
「さ、拙者は買い物にいくでござるが…」
「勿論私も行くよ!」
「やはり…」
「さぁ、レッツゴー!」
買い物は実に主夫だった。
できるだけ値切り、野菜を買い込み、本人は無自覚だけど笑顔でたらし込みおまけをもらう。
犯罪だわ、ある意味。
というか八百屋のお兄さん、剣心見て顔赤くしてなかった?
「いやぁ八百屋の方はいつも優しいでござるな。」
いや違う多分。
あれ剣心に…
あまり考えたくないけど、惚れてるよ?
「こんなもんでござるな。優?」
「…無自覚程、罪なものはないよ。」
「何の話でござるか?」
おろー…笑顔が眩しいでござ…って移ったぁぁぁ!!
「剣心は人気者だなーって。」
「そんなことはないでござるよ、今日は優がいたから、いつもより安く買えたのでござる。」
「え?」
「最初に寄った店の主人も、安くしてくれたお兄さんも、優に見とれていたでござる。」
嘘。
あれ剣心に向けてたんじゃなかったの!?
というか剣心にプラスされてたから更に安くなったってこと?
私こっち来てからやたらもててる。自意識過剰とかじゃなくてマジで。
もうモテ期ないね。
使い切ったわ。
「やっだーもててるよ私。うはーそんなことなかったから嬉しい!女物の服着て買い物行こうかな…これからは。」
「さ、帰るでござるよ。」
きゃーきゃー言ってたら手というか腕を捕まれ早歩きで道場へ足を向ける剣心。
「え、何どうしたの?」
「日も暮れる、遅いと薫殿が心配するでござるよ。」
「そうだけど…」
「それに…」
「??」
何か言い足そうな顔したけど無言のまま道場についた。
怒ってる…?
私何かいったかなぁ…
ていうか剣心歩くの早いし…
地味に掴まれてる腕痛いし…
「剣心、っ早い…って…」
「あ…すまんでござる…」
「はぁ…はぁ…どうしたの?」
「……」
もー何なんだいったい!
無言じゃわかんないよ!
「お帰りなさい二人共!優ったら汗びっしょり…お風呂入ってきたら?」
「あ、うん。」
「拙者は洗濯物を入れるでござるよ。」
「お願いね。…優、剣心どうかしたの?」
「さぁ?わかんない。」
まさか私のモテ期発言が…
あんなことになろうとは…