過去もまた、ゆらりと甘く

□君と、過去と、今
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―涼しげな、夏





「笹…七夕…」

「おろ?」

「七夕…」

「…?どうかしたでござるか?」


七夕もすぎて、本格的な夏になろうとしている今日この頃。

「七夕らしいことしてないなぁ…あ、恵さんのおはぎがたべたい…」

「恵殿なら明日来るでござるよ」

「ほんと?!」

目をきらきらさせて喜んでいる姿を見れるのは嬉しいのでござるが…拙者とて、喜ばせたい。


「だから今日は、拙者が作った団子で、我慢するでござる。」

「剣心…」

「ん?」

先程薫殿に作ってと言われて作った団子を、食べてほしくて彼女の部屋まで持ってきた。

そして冒頭に戻るわけでござる。

「ありがとう…恵さんのおはぎは確かに好きだよ?でも、剣心が作るご飯も、お菓子も、すごく好きなの。」

「……そう、か…作った甲斐があったのでござったな…」

「ふふっ、一緒にたべよ?」

「あぁ。」


縁側に座って、しとしとと降り始めた雨の音に耳をよせて、彼女を抱きしめる。

団子を一口口にいれれば、美味しそうに食べた。

やはり、この笑顔が一番、かわいいでござる。


「ん、剣心?」

「ん?」

「あーん。」

「……ん」

「あ、ちょっ…もー」


指で摘まれた団子を食べて、そのまま指も舐めると、呆れたように笑った。


「剣心…」

そのまま唇に優しく触れれば、鼓動も伝わる。

幸せ…というのは、こういう気持ち、なのだろうか。
柔らかくて、愛しくて…


まるで、あの時のような…

「剣心?」

「え?」

「顔。」


いや、あの時とはまた違う、幸せなのかもしれない。
すべてを話して、それでも受け入れてくれた彼女。

「あ、戻った。」



昔も今も、拙者は回りに助けられ、恵まれているのだと、実感する。


「すき…」

「拙者も、すきでござる…」



過去も、未来も…
拙者は一人ではござらん。

かけがえのない、大切な…


思い出と、記憶。

そして、なにより。


君がいる。





*


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