ただ君と、甘い幻に浸る

□絶対に負けない!
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「胴あり一本!!」


「ありがとうございました!!」

薫ちゃんは強い。
そんな薫ちゃんに指導をしてもらって早ふた月、最近は弥彦とも手合わせしたりして、更に力を強めてます、何でかって言うと…

「剣心から一本取りたい…ねぇ。」

「そう!!刀はまぁ絶対無理だしまず扱えないから。だから竹刀でなら、って思ったの。」

「確かに剣心は、竹刀は苦手だって言ってたけど、だからって弱いわけじゃないんだぜ?」

弥彦との手合わせも一段落して、休憩中。
う〜ん…とうなる弥彦に無理?ねぇ無理?と目で訴えてみる。

「動きを読まれてすぐに一本だな…」

がっくりうなだれる私に弥彦が慌てて付け足す。

「い、いや…勝てないこともないと思うぜ!」

「ほんと?!」

「あぁ、まぁ…優が相手だったら剣心は手を出さないだろうし」
「それじゃあだめなんだって!」

「て言われてもなぁ…」

頭を掻いて困った…と言う弥彦、唸る私。

そこへ剣心がやってきた。


「二人して難しい顔でござるな。」

「優が無理難題を言うから困ってんだよ。」

「ちょ、言っちゃダメだからね!」

「わぁーってるよ。」


のほほんとした顔でこちらを見る剣心に、竹刀を渡す。

「おろ?」

「おい優、まさか…」

「絶対にとってやる…」

「こ、こぇぇ…っ」

がるるるーと唸る私に剣心は目を見開いてついてこれていない。

剣心にはどうせ小細工は聞かない。
ならば正面からいくのみ!!


「はぁぁぁっ!!」

「ま、待つでござる!」

「待たない!」

剣心の気配が読める…
特訓の成果が出てる!


「あいつ、いつのまにあんな強く…」

「おっとっと…優、落ち着く、でござる、よ。」

ひょい、ひょいって軽々よける剣心。
わかってはいたけど…
腹が立つーっっ!!

「打ってきなさいよ…!」

「と、言われても…」

「こないなら…」

「おろ…?わ、わっ…」

ぱんっぱんっと竹刀のぶつかる音が響く。
剣心は受け身のまま後ろへ少しずつ下がっていく。
私が押しているから下がるしかない。

それにしてもやっぱり強い。
隙なんてやっぱり全然ないし、何よりぜんっぜん戦う気が本人にないのにこちらの動きは完璧に読まれてるのがむかつく。


うー…泣きそう…

相手にされてない…


「優、あいつ…」

「…優?」


そのとき、一瞬だけ剣心の気がそれた。


「うりゃ!」

「お"…ろぉ〜……っ」


「ど…胴、入った…」


むしろ鳩尾に入りました。
さすがの剣心も悶えています。

やったね☆


「やったぁー!剣心から一本とったぁぁぁ!!」


嬉しくて飛び跳ねていると、よろよろと剣心が起きあがってきた。


「強く、なりすぎではござらんか…?」

「そんなことないよ、私はただ剣心の弱点を探してただけだもん。」

「弱点?」

「そ。涙に弱いってことがわかりました。」

あれは本気で泣きかけていたとは言わないけどね。


竹刀を直していたらくすくすと笑い声が聞こえた。

「優を好きになってしまったことが、拙者の弱点。つまり、優自身が拙者の弱み。」

「なんか、喜んでいいのか悲しむべきなのか…」

「勝敗は既に決まっていたということでござる、端っから、優には勝てないでござるよ。」

にっこりと笑顔で言われて、なんだか照れる…

「さて、拙者は洗濯を…」


言われっぱなしは性に合わない!


「私だって剣心には勝てないんだから!それだけ好きなんだからねっ!」

「……。」

「な、に…っけん、し…」


「そういう事を言うと、止まらなくなる事を知っているのでござるか…?」


いきなり抱き寄せられて顎を掬われる。

剣心の顔が近くにあって、心臓が痛いくらい跳ねる。


「優…」

「ん…っふ、」

舌を吸われて体から力が抜けるけど、剣心が支えるから座ることが出来ない。


「はぁ、っ」

「続きは、また…後で。」


ゆっくりと床にへたり込んで剣心が去るのを待つ。


「っ…ば、か」

腰が抜けて、立てそうにない。


弥彦は?とあたりを見渡しても道場には私一人、どうやら途中でいなくなったみたい。




「やっぱり…剣心には…負けちゃうよ。」





同じ事を、言っていたとはつゆ知らず

夜も更けて、朝にはまた…

腰が立ちませんでした。



あぁいうときは手加減を知らない剣心を、一度どうにかしなければと思い直す、今日この頃。


次こそ勝ってやる!


end

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